平行線上の君

 自分の事を一番理解しているのは、果たして自分なのだろうか。
 こんなことを思ってしまう程度に、俺は俺を理解していない。

「よーし次行くぞーティーダ! 敵に囲まれた場合その1ー!」
「ちょ、ちょっと待、わーっ! 何で今日は俺ばっかり!!」
「この前の危なかったからなー。ちゃんと訓練しとかないとリーダーに怒られるぜ?」
「やってるってのー!」
 ムキー! と怒りながらも手を休めないティーダは、周りの状況を把握して、それに合わせて行動できる能力は長けている。
 本人曰く、ブリッツの練習の賜物なのだとか。命に危険が及ばないのであれば、成程スポーツをするのも鍛錬にはいいのかもしれないと考えながらも、静かに、鋭く敵を仕留める。

「甘い」
「っわ!」
 足をすくわれ地面に倒れたティーダの喉にスコールが武器を向ける。

「よし、そこまで。ちょっと休憩にしようか」
「さっさとティーダから剣を退けろ……ティーダ、大丈夫か? バッツの魔法を避けた時の動きはよかったぞ」

 自分を睨みながらすかさずティーダの傍によるクラウドに、軽い苛立ちを覚えつつも剣を下ろす。過保護なことだ、と悪態をつきそうになるのを抑えつつ少し目を逸らした。 クラウドの場合、保護者的な感情の他にも、別のものがあるような気がしないでもないが。
(俺には関係ない)
「へへ、大丈夫ッスよ。スコールも付き合ってくれてありがとな!」
「……別に」
 つい素っ気無い返事になってしまい、その事でさらに眉間に皺がよる。
 (……関係、ない)

「スコール大分丸くなったよなぁ」
「もっとティーダと話してきたほうがいいんじゃねえの?」
 ニヤニヤと笑いながらからかってくる二人を無視して、休憩の為に拠点へ戻ろうと歩き出した時、先を歩いていたティーダが振り返って心臓が跳ねる。

「…………」
「ティーダ……どうした?」
 クラウドが訊ねるが、ティーダはスコール……の、さらに後ろ、何も無い空間を見ているようだった。
「……あれ?」
「ん……」
「……!」
 次第に周りの皆も気付き始める。ティーダの見ている方向、そちらから奇妙な違和感を感じるのだ。違和感、というよりこれは
「歪み……?」
『皆さん、気をつけてください』
「コスモス!」

 光が像を結び、秩序の女神の姿を浮かび上がらせる。彼女が現れたことで全員に緊張が走った。
「あれは?」
『時空の歪みです……本来であれば、場と場をつなぐものか、戦士達を召喚する時以外に発生することはないはずのですが……それは私の力でも、カオスの力でもない……』
「自然発生、ということかな」
『恐らく……ですが、人か、モンスターか……何が現れるか分かりません』

 コスモスがそう言った時、歪みの力がさらに大きくなった。皆そこから距離を取ると空間が裂け、薄っすらと何かの影を確認する。
「!」
 中から人影が飛び出し――正確に言えば、押し出されたという感じだったが――咄嗟に武器を構える。
「え……?」
 ……が、その姿をはっきりと確認できるようになると、皆一様に戸惑った。

「っ……ここは、」
 その低い声に、黒を基調とした服に、髪の色に、そして何より、その人物が持っている特徴的な武器に、覚えがあったからだ。

「!? 貴様ら何者だ」
 顔を上げ、こちらが武器を持っている事を知った男は武器を構えて後退する。その瞳の色も顔立ちも、何より額の傷まで、男は戦士達の内の一人に酷似していた。

「……スコー、ル?」

 ジタンが呟いた名前に男の表情がぴくりと動く。

「え? え? どういうことだ?」
「髪が長いけど……似てる、というか……」
「スコール双子だったのか!」
(そんなわけあるか)

 皆武器を下ろして交互にスコールと男を見比べる。……すると

「え、おい」
「ちょっ……」

 唯一武器を構えることをしなかったティーダが、ふらりと前に出る。戦う雰囲気ではないことに戸惑いながらも、男は武器を下ろすことができないでいた。
「…………」
 目の前に立ち、じっ、と海色の瞳がスコールによく似た男を凝視した。
 その瞳がみるみる輝き始めたと思った時。

「レオーン!!!」
「っ!?」
「え? レオン?」
「スコールじゃないのか?」
「ティーダ! そいつから離れろ!」

 突然男をレオンと呼びあろうことか抱きついたティーダはクラウドの言葉なんて聞いちゃいない。レオンレオンと連呼してじゃれ付く様はまさに犬のようだった。
「レオンだー! レオンっスよね! レオーン!!」
「お、おい、何だお前っ……何故俺の名前を知ってる!」
「わかるッスよ! オレ! オレのことわかんない?」
「…………?」

 がば、と体を離して満面の笑みを浮かべた少年を見て、男は「あ」、と口を開く。
 太陽を思わせるような明るい笑顔が、異世界で出会った、今は自分の帰りを待っているだろう少年のそれと重なった。
 髪の色も体の大きさも年齢も違うのに、そういえば口調も同じで、声は少し低くなっただろうか。何より、真直ぐに向けられた透き通った海色の瞳は。

「…………ティーダ……?」
「っ! レオンーーー!!」
 ぱあああっと更に明るい笑顔で抱きつくティーダに、戦士達も男も、しばらく声をかけられないのだった。

――――――

「コスモス、これは一体どういうことですか」
『彼の世界に起きた歪みが、偶然ここに繋がってしまったようですね……レオン、あなたの世界にも、多くの時空の歪みがあるのですね?』
「そうだな、ここと同じように、様々な世界が繋がりあっている。自由に行き来できる者は限られるが……」
「で、ティーダと知り合いなのはなんでだ?」

 空気を読まずにバッツが質問する。ティーダはにこにこと嬉しそうにしながらレオンを見ているだけだ。
「パラレルワールドってやつじゃないの?」
「なんだそれ?」
 幼いながらもコスモス陣で一番の知識量を持つオニオンが口を開く。知的好奇心からか、落ち着いた大人の男に憧れている節があるオニオンは興味深そうにレオンを見ていた。
「簡単に言えば、例えばバッツが住んでた世界とは、別の現実が存在するってことさ」
「おいおいオニオン、オレだってそれくらい分かるって。だって皆別の世界から来たんだし」
「そういうことじゃなくて……バッツが住んでいる世界と同じ世界があって、同じ人たちが暮らしているけど、全然別の人生を歩んでいる、みたいな感じかなぁ。 実在するとは思ってなかったけどね」
「へぇ……じゃあ、レオンの世界にも『ティーダ』ってやつがいて、そいつはレオンと知り合いなんだな!」
「年齢とか違うみたいだけど、レオンはやっぱりスコールってことか? でも何で名前が違うんだ?」
「それは……」
 どう説明したものかと困ったように眉根を寄せるレオンに皆それぞれに興味を抱いた視線を送る。一部を除いて。

「もー皆、スコールはスコール、レオンはレオンっスよ!」
 その一声にレオンは顔を上げる。自分の知っているティーダと同じ、眩しい太陽のような笑顔がそこにある。

「……そうだ、俺も聞きたい事がある」
 スカイブルーの瞳が真っ直ぐにティーダに向けられる。ん? と首を傾げた姿が、ますます自分の知っている少年と重なった。
「俺の世界にも、確かに『ティーダ』はいる。でも、お前ではない。俺の知っているティーダは……確か十三、四くらいの少年だった」
 ざわっと戦士達に動揺が走る。
(十三、四くらいのティーダ……だと)
(超見てぇ……)
 概ね皆が同意見だった。

「なのに、何故お前は俺を知っている」
「んー……」
 首を捻るが、ティーダはすぐにぽんと手を打った。
「思い出!」
「思い、出?」
「俺はレオンの知ってる『ティーダ』じゃないけど、でも、何でか分かんないんだけどさ、俺の中には『ティーダ』の記憶が、思い出があるんだ!  アンタを見た瞬間にぶわーって思い出したんスけどね。だから、レオンに会えて嬉しい! ってのは、その『ティーダ』の気持ちッス!  だから本物もきっとレオンにすっごい会いたがってると思うッスよ!」
「……そうか」
 ティーダの言葉で、ふわりと表情を和らげたレオン。先ほどのティーダの言葉もあってか、その場にいる全員も理解する。
 同じではあるけれど、スコールもレオンも、確かに別人なのだ。

――――――

『恐らく数日後、また時空の歪みが開きます。それを使えば貴方の世界へ帰れる可能性はあります……』
「可能性、か」
『強い、強い思念が必要になります。確たる信念を持てば、迷うことなくいけるでしょう……もし揺らぎがあれば、次元の狭間を彷徨い続けることになります』
「問題ない。俺には、光がある。それが俺を導いてくれる」
 力強い光を宿した眼に、コスモスは柔らかく微笑む。
『ただ……正確な時間はわかりません。どうか、チャンスを逃さないように……』
「ああ、感謝する。秩序の女神」

 コスモスとの謁見を終えると、待っていたティーダが飛びついてくる。『ティーダ』の記憶があるらしいとは言え、成長した姿の彼に抱きつかれるというのは なんだか不思議でくすぐったい気持ちだった。
 『ティーダ』にするように頭を撫でてやると嬉しそうに目を細める。
 今は皆休憩しているらしく広間に行くと、ふと刺すような視線を感じて周りを見た。
(……あぁ)
 一人合点がいく。視線の元は、自分と……かつての自分と同じ名前の男からだった。視線を返すとふいと逸らされてしまい、思わず笑いそうになるのを堪える。
「レオン?」
「何でもない」

 視線を外して他の戦士達の会話に入りにいっても、再び視線を感じてまた笑いそうになるのであった。

 次の日、いつものようにジタンとバッツはスコールと共に辺りの調査に出ていた。
 いつもよりハイペースで敵を倒していくスコールを見ながら二人はこそこそと小声で話し合う。
「スコール荒れてんな~」
「ま、ティーダが誰かとべったりなんてよくある事だけど」
「……っ、ふ」
「…………くくっ」
「「相手が自分じゃなぁ」」
 堪えきれずに笑い出した二人を、この上なく不機嫌な顔でスコールが睨みつけた。
 キャーコワーイなどと棒読みで言う二人を殴りたくなるが、苛立ちは全てイミテーションにぶつけた。
 傍から見ればイミテーションが可哀想になるほどに完膚なきまでに叩きのめす様は正に獣のようだ。

「おーい!」
「お? 噂をすれば……」
「ティーダ! どうした?」
 その声を聞いてスコールが肩を揺らす。倒したイミテーションからライズしたアイテムを拾い、決してティーダの方を見ようとはしない。
「俺も一緒に行っていいッスか? 俺明日も非番だし、アイテム整理とかやることもないし」
「おーいいぜいいぜ~アシストしてくれよな!」

「…………なんでこっちなんだ」
「スコール?」
 ティーダを見ないまま、不機嫌を滲ませた低い声でスコールが問う。問いかけの意味が分からなくてティーダが戸惑っていると、スコールは珍しく、しかし静かに声を荒げた。
「こっちに来なくても、あいつと、レオンとかいうやつと模擬戦でもやればいいだろう」
「ん、だってレオンは今リーダーと難しそうな話してるから、だからスコールと」
「ッ……お前は……!」
 びくっ、とティーダが肩を震わせたのを知ることもなく、スコールは結局言葉の続きを続けられない。

(……アイツがいないから、だから、俺の所にくるのか。俺は、アイツの)

「スコ、」
「あー、折角四人になったし、二人一組でどっちが多くお宝集められるか競争しようぜ!」
「お、んじゃおれスコールとな。ジタン、そっちよろしくな~」
「おい、バッ……!」
「ティーダ、後でなー!」
「……うん」

 バッツは強制的にスコールの背中を押して、ジタンはティーダを促して歩き始める。内心やれやれと苦笑しながら。

――――――

「そう怒るなよスコール」
(怒ってない)
「いや怒ってるだろ?」
「…………」
「いつも言ってるだろ、口に出せってさ。ティーダ困ってたぞ?」
 珍しく……本当に珍しく、諭すような口調のバッツに少し頭が冷える。

 ――気付かないふりをしているだけで、本当はもう自覚しているのに認めたくなくて。
「面白くないのは分かるけどな~。俺もティーダとなかなか話せなくて寂しいし、クラウドもあれで不貞腐れてるし」
(クラウドは分かるがアンタもか)

「どーんとぶつかってみろって。ライバルはレオンだけじゃないしな! つーかレオンはライバルじゃないか」
「それは……」

 どういう意味だと聞きかけたところでイミテーションが現れる。大してレベルも高くないのに数だけは出てくるそれを面倒だと思いながらも、 どうにもやるせない苛立ちをぶつけるように突っ込んでいった。

――――――

「悪いなティーダ」
「や、俺の方がなんかやっちゃったみたいで……ごめんッス」
 しょんぼりと肩を落とす姿に、ジタンは主人に怒られた子犬を幻視する。空気が読めないように見えるのは知らないことや疑問に思ったことをストレートに 訊きすぎるからで、ティーダの本質が意外と繊細で他人を気遣うものであるというのはもう周知のことであった。
「あんま気にすんなよ、あれでスコール拗ねてるだけだしさ」
「拗ねてる?」
「んー、まあ……」
 さて率直に言ってしまうべきかとジタンは思案する。色恋沙汰というのはやはり甘酸っぱかったりやきもきしたりと傍から見ていて飽きることはないが、 あまり他人が突きすぎるのは無粋である。かと言って悪い方向に転じるのは嫌なのだ。彼らの心情を、その感情がどこを向いているのかを察しているから尚更。
「自分と同じ顔のやつが、自分より大人でかっこよくて、戦闘でも強くて、ってさ。しかも自分より人付き合いが苦手そうじゃないってところも、色々考える とこがあるんだよ、スコールは。ティーダとも仲良いしな」
 ああなかなかに難しい、と心中唸っているときょとんとしたティーダが口を開いた。
「ええー? でもさぁ」

 続く言葉に、ジタンは苦笑を禁じえなかった。ああ、やはり恋というのは楽しいものだ。

――――――

 レオンが来てから二日目の夜。そろそろ帰るための歪みが発生するかもしれないと言うと、皆名残惜しそうにした。本当に短い期間ではあるけれど、 レオンはもうコスモスの戦士達にとって仲間だった。
 今日の見張りは、レオンがやってきた時に真っ先に歪みに気付いたティーダと、スコールの二人だ。
「レオン! 寝なくて大丈夫ッスか?」
「ああ、少し夜風に当たってくる。屋上には、出てもいいんだったか」
「いいッスよ! 何かあったらすぐ行くから」
 少し寂しそうな顔をしたティーダの頭をくしゃくしゃと撫でる。それだけでふわ、と嬉しそうに笑ったティーダと分かれて屋上へ向かう。
 途中スコールとすれ違ったが、「屋上にいる」と簡単に言っただけでそれ以上の会話はなかった。

「…………」
 空には満月ではなく、少しだけ欠けた月が浮かんでいる。月と星の明かり以外なにもない黒い大地は、拠点としている家々の明かりが点る夜の街と正反対だ。 レオンが『ティーダ』と出会ったのもその街だった。今にも泣きそうな顔で、しかし泣くまいと必死に強がる姿は今でもはっきり覚えている。……結局泣いてしまったのだが。
 ここの世界にいるのはまだたった二日、だが『ティーダ』と会っていない期間はもっと長い。十ほども違う少年に不思議な程に惹かれている自分に苦笑する。 この世界に来た時も、あの少年を見てこんな風に成長するのだろうかと想像を膨らませたものだ。

 つらつらと考え事をしていると背後で気配がする。すれ違っただけだと思ったのに、どうやら追ってきたらしい。
「何か用か?」
 振り返らずに訊ねるも答えはない。答えはないが、考えは大方予想がつくので構わず続ける。
「そんなに苛立つな。お前の『ティーダ』を取る気はない」
(っ……何を、知った風な)
「お前は俺の若い頃によく似ているからな……何となく、分かるさ」

 何か言いたいのに、上手く言葉がでてこない。そんな様子が伝わってきて、レオンは苦笑する。
 昔の自分を見ているようだと。また、他人からは見れば自分はこんな風に映っていたのだろうかと思うと、少々苦い思い出でもある。

「……俺は……アンタが気に食わない」
「だろうな」
 同じ存在のはずなのに、生きてきた年数が違うだけで、こうも違うのかとスコールは歯噛みした。
 雰囲気が違う。戦闘経験も違う。他人との接し方も違う。挙句、この2日間ティーダの隣には常にレオンがいて。
「アンタは俺と違う……!」
「当然だ。俺とお前は別人なんだからな」

 あっさりと、告げられた言葉に肩透かしを食らったような気がした。一人で空回りしているようで、かっと顔が熱くなる。
(殴りたい……)
 何を、とは言わないが。

「スコール。確かに俺たちは同じ名前で、同じ体を持っているかもしれない。だが俺たちは別人だ。お前はお前の、俺は俺の人生を歩んできた。 たとえクローンを作ったって、同じ人間になるわけじゃないだろう? そういうことだ」
 饒舌に喋るレオンは、ふと柔らかく笑ってスコールの方へと振り返った。そこには、素直になれないスコールと違い、大切な誰かを思う気持ちが現れていた。
「……だから、俺が例え『ティーダ』を好きだったとしても、お前のティーダを好きになるわけじゃない」
 納得したか、なんて聞かれればふいと視線を逸らすしか出来ないスコールは、やはりまだレオンには勝てないらしい。

「……!」
 その時、大きく空間が揺らいだ。レオンがもたれかかっている手すりの向こう、何もない空間にぽっかりと、大きな穴が広がっていた。
「時間のようだな」
「……っ、おい」
「皆には挨拶できないようだから、後は頼んだぞ『スコール』」
 まだ何か言おうと口を僅かに開閉させるスコールの後ろから、闇に浮かぶ金が飛び出す。
「レオン!」
「ティーダ! ……こんなに急ですまないな。短い時間だったが……ありがとう」
「俺もっ! 色々ありがとな! 向こうのティーダにも早く会ってやれよー!」
 笑って僅かに頷くと、レオンは軽々と手すりを飛び越えて、その闇へと飛び込んでいった。まるでそれを待っていたかのように、レオンの姿が呑み込まれると空間の歪みは消滅してしまった。

 先ほどまでのことがまるで夢かと思うほど、そこには静寂が広がっていた。いつのまにか闇は薄れ、じわりと空の色が変わっていく中、二人は暫く無言で立ち尽くした。
 その静寂も、くしゅんというティーダのくしゃみで破られる。へへ、と照れ笑いするティーダに、スコールも自然と苦笑を零した。
「戻るッスか」
「……ああ」
 下へ降りようとして立ち止まる。後ろにいるティーダへと振り返るときょとんと目を丸くしてスコールを見ていた。
「……その、昼間……」
 悪かった、と言うよりも先に手を握ってきたティーダに、今度はスコールが目を丸くする番だった。
「スコール! レオンってさ、かっこいいよな!」
「……は……?」
「大人の男ーって感じだし、戦闘も強いし、皆の頼れる兄貴分って感じッスよね」
「…………」

 せっかく、人が謝ろうと一歩踏み出したところでそれを悠々と遮る彼はやはり空気が読めないと思う。謝罪を述べられなかったどころか、 まだ疼く傷口を突かれた気分だと心の中で肩を落としていると、やたらと目をきらきらさせたティーダの顔が間近にあって思わず変な声が出た。
「な、」
「でもさ、そんなの関係ないんスよ! だってレオンとスコールは違う人だから!」
 僅かに上気した顔で、ティーダが今まで見た中で最高の笑顔を見せたと同時に、眩しい朝日が差し込んだ。
「俺が好きなのは、スコール!」
「……え、」
「俺が一番、大好きなのはっ」

『それさ、スコールに直接言ってやってくれよ。多分いいもの見れるから』
『どーいう意味ッスかジタン』
『ま、いいからいいから』

 朝日で明るくなった世界で、ティーダの目にははっきりとその光景が映し出されていた。
 この上なく、耳まで真っ赤になったスコールの顔が。

 これは確かにいいものを見れたと思いながら、フリーズしたままのスコールへと飛びついた。

――――――

あとがき。

 スコ→ティと見せかけてレオティとみせかけてスコ→←ティでした!という話
 ミシア様のお力でスコールがレオンな外見になるとかも大変美味しそうではあるのですが、一応彼らは別世界の別人なのでこんな感じに。
 私の中でのレオンさんってスコールよりも大分大人なイメージなので書いてて新鮮で楽しかったです(゚∀゚)=3  結局イチャラブで終わる私の引き出しのなさよ……/(^o^)\でもハッピーエンドが好きです!  あ、でもティーダは、恋愛か友情かまだよくわからないけど、どっちにしても一番大好きなのはスコールってことですΣd(´∀`)あ、大して違いがなかった
 最後まで読んでくださりありがとうございました!

■オマケ1■

「レオンんんん!! おかえりなさいッス!」
「ただいま、ティーダ」
「……? なんかいいことあったッスか? レオン、楽しそうッス」
「まぁ、色々とな」
「聞かせてほしいッス! 外の世界のこともっといっぱい!」
「あぁ」

(向こうのティーダの事を話すと妬くだろうか……)

――――――

妬いて欲しいレオンさん

■オマケ2■

(そういえばあいつ……)

『だから、俺が例え『ティーダ』を好きだったとしても――』
(……あいつ、まさか……)
「スコール? どしたッスか? 顔色悪いッスよ」
「い、いや……何でもない」
(確か十ぐらい離れていると言っていた……はず……)
「…………」
(……聞かなかったことにしよう)

――――――

自分によく似た男がショタコンだと思いたくないので都合の悪い部分は記憶から抹消するSEED/(^o^)\

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