「ん、んっ」
漏れ出る声が浴室内に反響して聴覚を刺激する。
絶えず降り注ぎ肌を伝う微温湯の感触はスフィアプールの中を、試合を思い出させて――プールの中は微温湯ではないけれど――ティーダは堪らず目を瞑った。
すると今度は口内で絡む舌と、肌をまさぐる熱い手に意識が集中してしまって体が震える。
壁に背を預け、目の前には大きな体。追い詰められた獲物みたいだとぼんやりと思った。
「何、考えてんだぁ?」
「…………」
耳を食みながらそう訊いて来たので「おやじのこと」とからかいを含んで答えてみたら、ぴたりと一瞬動きを止めた後、少し強めに首筋を噛まれて体が跳ねた。
いつの間にかシャワーは止められていて、既に反応している自身はジェクトのものと一緒に大きな手の平で包まれ声が上擦る。
「あ、あ……ッおや、おやじ……」
「おめぇも、ほら」
片手を導かれてそこへと触れさせられる。熱に浮かされた思考でゆるゆると手を動かせば、ジェクトのごつごつとした手も動きを再開させる。快楽に翻弄されて床にへたり込みそうになるのを、自身を扱くのとは反対の手で支えられた。
「んッ……んん、あっ……!」
「こういう時は素直だよなぁ」
くくっと喉の奥でジェクトが笑う。こういう、というのは今日のように白熱した試合の後で互いに熱を持て余している時のことで、いつもは強がるティーダが少し素直になる。
切羽詰まってるのは同じだろ、と批難の視線を向けるとキスされて急に扱くスピードが上がる。あっという間に高められてあっけなく射精してしまった。力が入らなくて座ってしまいたいのにジェクトの腕はそれを許さなくて、立ったままする気かと恨みがましく思いながら震える息を吐き出した。
「濃いな」
「っ……はぁ……おやじ、は……出しすぎ……」
ジェクトは二人の腹を汚した白濁を掬い取り見せ付けるようにぐちゃぐちゃと指に絡める。
達したばかりなのに二人の体はまだまだ昂ったままで、自身はすでに力を取り戻しはじめている。不意にティーダの前に跪くジェクトに、何をする気か瞬時に悟って慌てたがもう遅くて。
「おやッ……ッ……あ、くっ……!」
躊躇いも無く口に含まれてびくんと体が跳ねる。逃げようにも後ろは壁で、追い討ちをかけるように後ろの窄まりに指が入ってきた。
生暖かい口内の感触と、後ろで蠢く指に翻弄されて無意識に腰が揺れる。受け入れることに慣れた体は既に二本、三本と侵入を許してしまう。
「あっ……あッ……ん、んっ……ぅ」
やわやわと唇で食むように刺激され、珠をなぞられ、限界だと訴えるようにジェクトの髪に指を絡ませると不意に見上げられた。
「あ……ッ」
肉食獣を思わせるよう獰猛な紅い瞳が、数刻前の試合を、ぶつかり合ったあの瞬間の興奮を呼び起こして。
「ッ――ああぁ! あッ……あっ」
ぞくぞくと走る快感に抗えず二度目の精を放つ。崩れ落ちそうになる体をやっぱりジェクトは許してくれなくて、顔にかかった白濁を指で拭いながら立ち上がった。
「んだよ、勝手にイってんじゃねぇぞ」
「ふ……っ……んな、こと……言われ、たって……ッ」
少し拗ねたようにも見えるジェクトはティーダの片足を抱えると自身の猛ったものを宛がい一気に、
「ちょ……ッ……あ、あああッ!……いっ……!」
「っ……」
あまりに性急なそれにやっぱり切羽詰ってるんじゃないかと文句のひとつでも言いたいけれど押し寄せる圧迫感にそれどころではなくて。
「あ、あ……ひ……っ」
立っているせいで重みが加わりいつも以上に挿入が深くなる。その質量と熱と、痛みと快感に意識が持っていかれる。息を止めるのは得意なのに、あまりの圧迫感に呼吸が上手くできなくて息苦しさで涙が滲んだ。
貫かれてひぃひぃと必死に呼吸する様は傍から見たらきっと無様なんだろうと頭の隅でぼんやりと思った。最初こそ余裕ぶってティーダを翻弄してやろうと思っていたジェクトも、こんなにがっついてガキか、と自嘲した。
「ん、あ」
「動くぞ」
一度ぐい、と腰を押し付け、ゆっくりと律動し始める。穏やかなのは最初だけで、すぐに嵐のような激しさに変わる。
「い……あッ……あ、あっあ!」
「っ……ふッ」
「……っ!? やッ……あ、おやじっ! なに……あっ」
「さっき勝手に、イっちまったからなぁ……ちっと我慢、してろっ」
性器を握られ射精できないよう押さえられる。出口を求めて渦巻いていた快楽がせき止められてティーダはいやいやと頭を振った。
「や、だ、ぁッ……! あ、はな、はなし、てっ……おやじッ……! ぅあっ……!」
すがり付くように自分よりもずっと逞しい身体へ腕を伸ばす。背中が擦れて少し痛いけれど、ジェクトの熱いものが何度も気持ちいい場所を擦って気にならなかった。
ただしがみついて喘ぐことしかできないでいるティーダの顔や首筋にジェクトが何度も唇を降らせる。何度も突き上げ、床についていた片足も殆ど浮いて辛うじてつま先だけがついている状態だ。
一番気持ちのいいところを狙って腰を動かせば殆ど泣き声に近い嬌声が浴室に響いた。
「あッあ……も……い、く……いきた、い……あッおやじ、ぃ……おねが……ッ……」
「ああ……っ……イけ……!」
自身を押さえていた手が扱く動きに変わり、ジェクトのものがぐりぐりと最奥を突き上げて、今まで感じたことのないほどの快感がティーダの全身を襲う。
「あぁぁあぁッ――!! ッ……あ、あ……!? や、っ……ひ!」
「ぐ、ぅっ……! ……ティ、ダ……?」
締め付ける内壁にジェクトもまた高められ、どくどくと熱い飛沫をなかへと注ぎ込む。けれど満足げな息を吐くまもなく、ティーダの様子がいつもと違うことに気付く。
「おい……っ?」
「うあ、あッ……あっ! んんーっ……んーっ……!」
「おい、……くっ……大丈夫か?」
太股が震え、断続的に押し寄せる快感の波に訳もわからずただ首を横に振ってジェクトの身体にすがりつくことしかできない。治まらない快感にジェクトのものをぎゅうぎゅうと締め付け続けてしまう。
それにまた煽られるものの、ジェクトが一度自身を引き抜きゆっくりと身体を床に下ろせば、ティーダのそれからびゅくりと力なく蜜が零れた。
抱き合ったまま子供をあやす様にティーダの頭や背中をなでていると次第に呼吸が落ち着き、くたりと腕から力が抜けた。
「ティーダ」
「……だい、じょぶ……」
と、思う。と付け加えられてジェクトは少しバツが悪そうに頭をかいた。殆ど後ろの刺激だけで達してしまったせいか、いつも以上に快感が強くて辛かったのだろう。くったりとした身体を引き寄せ、涙の滲んだ目尻にキスをすると、ティーダはおずおずとジェクトを見上げた。
「あの、さ……」
「ん?」
ティーダ自身はまだ力を持っていたものの、先ほどの様子では連続で交わるのはきついだろうと、ジェクトはまだ身の内に燻っている熱を抑えながら優しく問う。と。
「あの……オレ……だいじょぶだから……続き」
してもいいよ、と僅かに肌を上気させて言うティーダにジェクトの理性が崩れ去ったのは仕方の無いことだった。
――――――
してもいいよ×
してよ○
ふたりとも飢えている