10総受け祭:後

カオス勢×ティーダは全体的にシリアスです。しかしセフィティは管理人の本命故にどうみても贔屓です本当にありがとうございました。
全体的にCPというより何か一緒によく分からない会話してるだけのような気もします。しかしセフィt(ry

ガーランド(09.10/21)

 毎度毎度まとまりのない連中だと思う。
 幾度となく繰り返されてきたこの戦いで出会うカオス側に召喚された者達はそろいもそろって曲者ばかりで、自らの欲望の赴くままに行動している。かく言う自分も似たようなもので、宿敵との戦いを愉しむと共にこの輪廻を見守っていた。

「なぁーってば!」

 ………………だというのに、何なのだこれは。

「何なんスかこの世界は? いきなりかおすがどーのとかこすもすがどーだとか言われても分かんねッスよ」

 呼び出された者は大抵、ぼんやりながらこの世界の事を、戦いの事を刷り込まれている。何度も戦いに加わっている者は自然と次の世界でも動くようになっていくし、何も刷り込まれ無かった者も説明をすれば嬉々として戦いに身を投じた。
 今回も同様で、他の者達はさっさと自分の為に動き出したというのに、この子供は未だに残り説明を求めてくる。
 恐らく今回が初めてなのだろう。……恐らく、というのは、自分も時に前の世界の記憶が欠けていたり、受け継げない時もあるからだ。

「……何度も言ったであろう。ここは神々が争う世界。我らはその駒として呼び出されたのだと」
「だーかーらー! 何でその神様達は戦ってるんスか? しかも何で俺が呼び出されたんだよ?」

 重くため息をついた。これはもう何を説明しても納得しないだろう。放っておいても大して問題はないとは思うが……。

「貴様には、コスモス側に宿敵がいないのか?」
「シュクテキ?」
「因縁の相手だ……そうだな……ジェクトとか言った奴がいるが、アレはお前の宿敵ではないのか?」
「………………」

 どうやら外れではなかったらしい。急に真面目な顔つきになって黙り込んでしまった。この様子なら放っておいても戦いに行ってくれるだろう。それでいい。破壊と創造を繰り返すこの世界で、戦いの輪廻というある種の秩序を乱されては困る。戦うのならば後は何をしようと自由だ。
 ただ、気になるのは……この少年が、カオス側だというのに大きな光の気配を持っていることだ。あり得ないと思いたいが、コスモス側に転じる可能性が無いわけではない。それほどにこの光は言い知れぬ不安を抱かせる。

「……オヤジは俺がブッ倒す! でも、やっぱ何かヘンッスよこの世界」
「……では、どうするというのだ?」

 その問いは、純粋な興味だったのかもしれない。こんなちっぽけな存在に、夢でしかないこの少年に何ができるのか、と。

「んん~……それは…………とりあえずオヤジぶっ倒してから考えるッス!」

 とにかく、少年の父親らしいジェクトとかいう男を倒さないと気がすまないらしい。何も考えないその無鉄砲さは滑稽でもあり、少年らしい。しかし今の彼では父親を倒すことはできないだろうと思う。父親の方も、無意識に加減して、少年が消滅しないようにするかもしれない。

 やっかいな者達が来たものだと思いながらも、走っていく背中を見つめる視線が僅かに和らいだのは、自分では気付くことができなかった。

皇帝(09.10/22)

※鬼畜皇帝さま

 子供が無邪気に、虫や蛙を捕まえて弄ぶように。
 弱者をいたぶるのに良心など痛まない。

「業の深い『罪』を背負っているな」

 それはもしかしたら、ある種の同情、憐憫だったのかもしれない。
 現実に存在する者ではなく、そして実の父を殺し自分も消える運命。
 憐れで愚かな少年だった。

「自分の父を殺してまで救いたい世界だったのか? 自分が消えてまで守りたいものがあったのか? 下らぬ、茶番だな」

 僅かに目を見開いた少年は、歯を喰いしばって俯いた。剣を握る手はぶるぶると震えている。

「っ……、お前に……お前に何が分かるってんだ!!」

 激昂した少年は感情に任せて剣を振るう。
 今にも泣き出しそうな顔は自分の中の嗜虐心を煽られる。
 感情を制御できない憐れな子供はがむしゃらに動き回り、次第に体力を失っていく。
 外と違いこのパンデモニウム城のように限られた空間の中では、自分の罠が有効だという事を分かっていないのだろうか。いや考える余裕もないのだろう。
 じわじわと追い詰め、ついにバランスを崩したのを見逃さず魔法を食らわせた。倒れた少年が逃げぬように雷撃で床に縫い付ける。這い蹲ってもがく姿は滑稽だ。
 怒りに燃える瞳はしかし、薄らと涙を湛えていて、ゾクゾクと本能を刺激される。

「たかが夢に何が出来る?」

 嘲笑うように言ってやれば、素直に感情を露にする。その感情すらも滅茶苦茶に壊してしまいたい欲求にかられ、少年の顎に手をかけた。
 普段は忌々しいほどに明るく振舞う少年の反抗的な瞳は実に壊しがいがありそうだ。自分好みの玩具に仕立て上げてやろう。
 堕ちた太陽を思い描き、蛇のように舌なめずりをした。

暗闇の雲(09.10/23)

※多分一番短いです……

 ちょこまかとよく動く、やかましい子供。
 新たにカオスの駒として召喚された少年に対する認識は、最初はその程度だった。

 しとしとと雨が降る中で少年はぽつんと立っていた。手にはまだ血のついた剣を握り締めたまま。
「雲……」

 こちらに気付き、小さく自分を呼ぶ声。酷く憔悴した様子はいつもの彼からは想像もつかない。

「……いつまでそこにおる気だ? ……行くぞ」
「…………うん……もうちょっと」

 再び俯いた彼は、もう光になって消えてしまった男が倒れた場所を見つめていた。
 繰り返される戦い。何度も何度も、自分の手で止めを刺してきたというのに。未だに慣れぬそれに彼は何度涙を流したのだろう。

 魔力で水に濡れない自分と違い、雨に当たり続けている彼の体は随分と冷たかった。マントで包み込むように抱きしめ、闇の中へと溶け込む。

 カオスに堕ちようと、彼は太陽のままだった。
 それでも、太陽も時には休まねばならない。
 だから闇と雲は太陽を覆い、ほんの少しの間隠しておくのだ。

 胎児のように丸まって眠る彼を見ながら、自分はいつからこんな人間らしい感情を持つようになったのかと、自嘲した。

ゴルベーザ(09.10/24)

「家族が敵にいるのってさ、戦いづらい? やっぱ」
「…………お主はそうなのか?」

 質問を相手に返すというのはあまり褒められたものではない。が、一度聞いてみたかった。本来はコスモス側にいるべきだった少年に。

「……オレ、は……オレは! オヤジをぶっ倒す! そんだけ!」
「そうか……」

 その表情を見れば、何も感じないわけではないというのは嫌と言うほど分かる。それでも彼は意固地だった。しかし、いつか本当に父親と対峙した時、今のままではきっと彼は負けるだろう。
 何故父親を倒したいのか、戦わねばならぬのか、その理由を見出すまでは。

「で、ゴルベーザは?」
「……辛くない、と言えば嘘になる。だが、それでも戦わねばならぬ」
「どうしてッスか?」
「私には……成すべきことがあるからだ」

 その為に弟と戦い、コスモス達と戦わねばならない。
「……いや、これは私のエゴ……かもしれないな」
「えご……?」

 闇に堕ちてしまった自分が、少しでも光に戻りたいと、その輝きを求めているだけなのかもしれない。そんな考えを振り払う。
 たとえそれが本音だったとしても、この戦いを、戦いの輪廻を変えたいのは本当だ。だから、自分が出来ることをするだけ。
 物思いにふけっていると、少年が下から覗き込んでいるのに気が付いた。

「ゴルベーザはぁ、ちょっと難しく考えすぎッスよ」
 そういってニカっと笑った彼は、その名の通り太陽のようだった。
 何故彼がこちら側に来てしまったのか、理由はさだかではない。それでもその笑顔には、自分以外の者にも少なからず影響を与えていることを知っていた。
 だからこそ、彼らは恐れている。この太陽の名を持つ少年の力は決して特別ではない。特別ではないが、ありふれたものだからこそ、カオス側にいる彼らはその正体に気付けず、恐れる。自分達の計画が、彼と言う異分子によって壊されるのではないかと。
 ありふれたものだが、彼の持つ力は大きい。自分の持っている計画もいずれ意味を成さないものになってしまうかもしれない。その時は、彼の力にかけてみたい。
 その為にも、彼に消えてもらっては困るのだ。

「……そうかも、知れぬな……」
「な。別に戦わなくてもさ、分かり合えるッスよ、二人なら」
「……お主は自分の事は棚に上げるのだな」
「なーんの事ッスかね~」

 惚けたフリをした彼は頭の後ろに手を組んで後ろを向いてしまった。
 組んだ手には僅かに力が篭っていた。

エクスデス(09.10/25)

 夢というのは、それを見るものがいるから存在する。
 元々『無』かったものを、人が想像し生み出しているだけだ。
 人が考えることを、夢見ることを止めれば、それは元の『無』へと還る。
 では夢とは何なのか。無いはずなのに在る。在るのに無い。

 そんな矛盾した存在であるはずの少年が鼻歌なんぞ歌っている今の状況で、考えることはそれこそ無駄なのかもしれない。

「……? まーた無がどうのこうの考えてるッスか?」
「ファファファ……貴様に話しても無駄な事」

 視線に気付いたらしい少年がくるりとこちらを向いた。
 その存在は夢であり無であるのに、彼の放つ存在感は強く、あまつさえ自我を持つ。
 あるいはその自我さえも、誰かが見た夢なのかもしれない。

「アンタ、よく世界を無に還すとか言ってるけどさ……それって寂しくないッスか?」
「………………?」

 質問の意味が分からず無言でいると、彼はふいと視線を外した。
 やがて大きく伸びをすると次元城の下へと飛び降りていく。一度止まって振り返ると、彼は少し怒りを含んでいるような表情をしていた。

「……アンタが、寂しいって、言ってんの!」

 そう言って去っていく背中を見ながら、その言葉の意味を考えた。
 寂しい、とは何だろう。感情の一種だとは知っているが、それがどれに該当するのかは分からなかった。

 自分には、知らない事がたくさんあった。

ケフカ(09.10/26)

 ハカイは楽しい。
 形あるものが崩れ去っていくのも、下らない感情や心を、希望を打ち砕くのも全てが楽しい。そこに理由なんて無い、楽しいから壊すだけだ。

「壊したら、終わりじゃないッスか」
「だからそれが楽シイんじゃなぁい?」

 けたけたと笑うと少年が眉根を寄せた。
 元の世界で、無意味に破壊を繰り返す『罪』の名を持つ父がいる彼ならば、この楽しさを理解できていると思ったのだが、どうやら彼もツマラナイ人間のようで大げさにため息をついた。

「はあ~ぁ、誰かぼくちんと一緒にハカイを楽しめる人はいませんかねぇ」

 自分の手で壊す方がもちろん楽しいのだけれど、強大な力でハカイされていくものを見るのもまた楽しいだろう。そう、あの小娘が持っている力のような。

「なぁ」

 自分を呼んだのだと気付いて、ぴょんとおどけて振り返ると、少年はくそ真面目な顔をしていて癇に障った。

「あんたが何もかも破壊して……破壊し尽して……壊すものが何も無くなったら、どうするんスか?」

「……くく……ヒャーハッハッハッハッ!」

 あまりに下らない質問で笑い飛ばしてやった。そんなもの決まっている。

「そぉんなの、また壊せるものを探せばイイんだよぉ! それにあいつらは勝手に造ってくれる! 壊しても壊してもまた生みだすんだ、だからまたそれを壊せばぁ、あいつらの絶望した顔も見れて楽しいじょ! まぁでもぉ」

 ほんの少しの怯えと嫌悪が混ざった顔はなかなかに心地がいい。興味の対象ではなかった彼を、少し壊してみたくなってきた。

「なぁんにもなかったら、世界もぼくちんもぜぇんぶ壊しちゃうよ?」

 その海色の瞳を壊したら、どんな色になるのだろうかと本気で考えた。

セフィロス(09.10/27)

※二人は付き合っててシリアスに見せかけたほのぼのです。長いです。あと手ブロ企画の担当でもあったので話にあわせて絵を描いてます。……どう見ても贔屓です。

「ぐっあ……!」

 敵の攻撃を食らって、ティーダの体が吹っ飛んだ。その先には蒼く深い湖があり、派手に水しぶきをあげて落ちる。
 ティーダに攻撃をした者はそのまま追い討ちをかけようと追いかける。自分と戦っているもう一人のコスモス――名前は知らない――が、私の気が僅かにティーダへとそれたのを狙い攻撃を仕掛けてくる。
 だがそんな攻撃にやられるほど、いや、コスモスの戦士に負けるほど弱いつもりは無い。愛用の刀を振り攻撃を弾くと、斬撃でいたぶりながらじわじわと体力を削る。
 しばらく応戦してやったがティーダがいつまで経っても戻ってこない。あんな敵に手こずる彼ではない。それに水中にいるのならばおそらく彼のほうが有利のはず。
 ふと心がざわついて、一気に距離を詰めるとコスモスの戦士を切り伏せる。ソレは光となって消えていったが、またすぐに元に戻るのだろう。
 湖へと行くと先ほどティーダを追いかけていった者の姿はなかった。代わりに当たりは強い冷気に包まれていて、嫌な予感がしてあたりを探す。――と。

「っ……ティーダ!」
「うぅ~……せ、ふぃろ、す……?」

 少し離れた場所で、上半身だけ岸辺に預けたティーダが青い顔でぶるぶると震えていた。その体は氷のように冷たくて急いで水の中から引き上げる。
 首に手をまわしてすがり付いてくると、なぜか少しだけ笑っていた。

「……はは……な、なん、か……せふぃろす……が、あったかいって……しんせん」
「…………無駄口を叩く元気はあるようだな」

 口ではそう言うものの、ティーダの様子に心底安堵した自分は、随分丸くなったものだと思う。
 彼を抱えて、寝床として利用している小さな洞窟へと戻る。魔法で火を熾こしていると、後ろでティーダがくしゃみした。

「びっくり、したッスよ……すっげー冷たかった……心臓止まるかとおもったっす……」
 体を温めようと何とか自力で体を動かしてティーダが火に近づく。
「……先ほど召喚獣の気配がした……恐らくシヴァの召喚石が近くにあったのだろうな。コスモスの気配を感じて、自分の存在を知らせようとしたのだろう」
「そっかぁ……だからアイツ……追っかけてこな……っくしゅ!」

 最初よりは大分顔色もよくなっているが、未だ体を擦りながら震えているティーダを見かねて服に手をかけた。

「せふぃ……?」
「脱げ」
「……………………え……え……?」
「いいから脱げ」
「え、ちょ……ちょっと……」

 僅かに抵抗するティーダの体から無理矢理ずぶ濡れの服をはいでいくと顔を真っ赤にして騒ぎ出す。何を今更、と思うが次のティーダの発言で一瞬思考が停止した。

「せ、せせセフィロスこんな時にいきなりとか意味分かんないッス! そんな裸で抱きあって眠ると温かいとかあれは多分漫画の世界の話でっ!」
「………………、……何を言ってるんだお前は」
「へ……?」

 濡れた体のティーダが顔を赤くしたまま涙目で見上げてくるのには少し煽られてしまったが、自分のコートを脱いでさっさと渡した。
「濡れた服のままでは温まらないだろう……それでも着ていろ」
「……ぁ……ぅ……」

 しゅうぅ、と頭から湯気がでそうなくらい顔を赤くして意味の無い呻きをあげたティーダを尻目に、自分も少し体が冷えたので荷物の中から簡素なシャツを取り出した。それは、ティーダがたまには服を綺麗にしろと言い出して、その間に来ていられるよう作られたものだった。
 それを身に付けていると、後ろでティーダももそもそとコートに腕を通す。勘違いしていた事が恥ずかしいのか反対側を向いたまま膝を抱えてしまった。

 背中合わせに座ると、ティーダがこちらを伺っている気配がして苦笑する。
 パチパチと木の爆ぜる音だけが響いて落ち着かないのかごそごそと体を動かしている。

「……私が、裸で温めあうなどと言い出すと思ったのか? お前は」
「う……だ、だって………………普段の行いのせいッスよ……」
「そうか」

 くく、と喉の奥で笑うと不機嫌そうなオーラが伝わってくる。
「温めてやろうか?」
「っ……馬鹿!」

 真っ赤になったティーダが背中を肘で思い切り突いてきて、少し痛かった。

アルティミシア(09.10/28)

「時間を操れるってさ、無敵じゃないッスか?」

 くすんだ金髪の少年が隣で首をかしげながら武器を弄っている。
 面倒な子供に捕まったものだとため息をつきたくもなる。別段今は動く時ではないので、ここで静かに休息をとっていたのだ。そんな時に丁度彼がやってきた。
 魔法の知識や時間の概念に乏しいものに説明するのは面倒なのだが、多少は納得させる答えでも出してやらねば際限なく話しかけてきそうだったので言葉を選びながらその疑問に答える。

「……時を操る魔法にはある程度の条件がつきます。それに消費する魔力も大きい。易々と使えるものではないのです」
「………………」
「例えば……時を巻き戻すことは私にはできない。出来るのは時を止めること、それも一時的なものにすぎません。時の魔女の称号を持つ私でも、過去を変えることはできない」
「……分かったような、分かんなかったような……う~」
「………………」

 はぁ、とため息をつく。頭が痛いのはこちらの方だ。かなり分かりやすく説明したつもりだったのだが……いや、この少年の理解力に問題があるのだろうか。

「過去は変えられない、かぁ」
「……何か変えたい過去でもあるのですか?」

 尋ねるつもりなどなかったのに、何も考えていなさそうなこの少年がふと考え込む仕草をするのを見て、つい気になってしまった。

「……んーん。変えたいんじゃなくてさ……」

 伝えたいことがあったんだ、と。そう言った子供は、いつものへらへらとした顔ではなく、妙に落ち着いた表情をしていたから。

 ――会話が途切れて、辺りを静寂が包む。もともとこうして静かに休憩していたかったはずなのに、何だか居心地が悪くなってそっと彼の傍を離れた。
 伝えたいこと、とはなんだろう。自分があれくらいの年のころは、一体何をしていたんだっけ。ぐるりと思考を巡らせて、考えても仕様の無いことだとかぶりを振る。
 時間圧縮で、今も過去も未来もない世界を作ろうとしているのだから。
 その世界を作り出す自分以外の存在は保証されない、自分が君臨し支配する世界。では、『夢』である彼の存在はどうなるのだろう。人ではない、魔女でもない、魔物でもない彼らなら或いは、存在できるのだろうか。
 馬鹿馬鹿しいと思いながらも、自分も他のカオス達のように彼に毒されているのだろうかと苦笑した。

クジャ(09.10/29)

※シリアスに見せかけてギャグ、と見せかけてシリアス?

 目障りな奴。いつも煩くて、明るい笑顔の少年。その名の通りの、太陽のような。

「ジタンって奴、アンタの弟みたいなモンなのか?」
「……端的に言えば、そうなるね」

 月は光を受けて輝きを増すけれど、彼の光は自分には相応しくない。

「そっか……オレ兄弟とかいないからわかんないッスね~」

 へらりと笑った彼に悪意は無い。嫌味でもなんでもないその台詞が何故だか酷く癪で、嫌悪感がこみ上げてくる。
 兄弟というものに漠然とした憧れを抱いているのだろう。でも自分達は、そんな単純なものではない。

「でもアンタ、アイツの事嫌い……っていうか……憎んでる、んだよな……なんで?」
「君に答える義務はないね。話したところで、君が理解できるとも思えない」
「……アンタ友達少ないだろ」

 ……ぶち。

「っ~~~何なんだい君は! 人が物思いに耽っている時に話しかけてくるし! 折角僕がやんわり拒否してあげてるのにその態度は!」
「今のどこがやんわりなんスか! 思いっきりストレートだったじゃんか!」

 あぁイライラする。大した力も無いくせにいちいち生意気な奴。自分が月で、彼が太陽だと言うのなら、正反対のものだからこんなにも気に入らないのだろうか。

「君こそ人の事が言えるのかい? 父親を憎んでこちら側に召喚された君に」
「っオレは! ………………」

 父親の話題を振った途端、大人しくなってしまった彼はいつものへらへらとした様子を微塵も感じさせない。何故だかこちら側が不安を感じてしまう位の大人しさに、僅かでも罪悪感を感じてしまった自分が嫌だった。

ジェクト(09.10/30)

「おらおらどうしたァ!?」
「ッ……そオヤジぃ!!」

 がむしゃらにぶつかってくる息子の攻撃を真正面から受け止める。やはり、スピードはあるがまだまだパワーが足りない。
 それでも、トリッキーな動きに翻弄され自分も時折ダメージを受けている。

『ジェクト……息子と戦えるのか』

 光の戦士に言われた事を思い出す。この世界の秩序を守るために、息子と戦えるのかと。
 そもそも何故彼が向こう側にいるのかわからなかった。立派に成長した姿を見たときは驚いたし、感慨深くもあった。けれど、今は敵同士で戦わなければならないというのは正直、辛い。格好が悪いから、そんな素振りは見せないようにしているが、勘のいい光の戦士は気付いているかもしれない。
 ただ、成長した息子と戦えるのは、嬉しくもあった。

「ぐ、あッ……!」

 自分より小柄な体が軽々と吹っ飛ぶ。腹部に重い一撃を与え、壁に激突した息子が力なく地面に倒れる。
「まだまだ、そんなんじゃオレ様には勝てねぇよ」
 加減したとはいえ、かなりのダメージを受けている彼をついいつもの調子でからかってしまった。自分が嫌われてしまった原因のひとつだというのに、懲りていないらしい。

「……んだよ……」

 気絶したとばかり思っていた息子が声を上げる。苦しげな息の中出てくる言葉は、怒りと悔しさと……とにかく色んな感情が混ざり合っているようだった。

「たおすんじゃ、ないのか……よ……」
「んだよ、倒しただろーが」
「違う!」

 激昂した息子が体を起こす。両目からぼろぼろと涙が零れていて、あぁまだ泣き虫は直っていないのかとぼんやり思った。

「さっさと……消せば、いいだろ」
「……弱ってる奴にトドメ刺すほど、オレ様は優しくないんだよ。………まぁ、また出直してこいや」
「っ……アンタは……いっつもそうやっ、て……!」

 ひく、と喉が震えた。涙を流すまいと必死で、でもやっぱり耐え切れず零れる。昔から、息子のこの顔は苦手だった。どうすればいいのか分からなかった。慰めるにしても励ますにしても、自分はあまりに口下手だ。そもそも泣かせたのは自分だから、余計にどうすればいいのか分からなかった。情けない話だ。

「……だいっきらいだ……!!」

 喉から搾り出すようにでた言葉に、答えることができなかった。

ガブラス(09.10/31)

 かつて神々の戦いに身を投じ、真実を知り、絶望した自分は戦場を捨てて負け犬となった。
 無明の地獄。今もまだ続けられているあの戦いで、敗北したものが時折ここへと迷い込んでくる。その者が生きるに相応しい者かどうかをジャッジすることが、いつからか自分の使命のようになっていた。

「……あれ? ここは……」

 今日も一人、迷い込んできたものがいる。金の髪に、海のような青い瞳の少年だった。

「あ、おっさん誰? ここどこ? オレ戻んなきゃいけないんスけど」

 負けた時の記憶がないのか、普通に道を尋ねるのと同じ気軽さで彼は話しかけてきた。何故、何度も繰り返されるあの無意味な世界に戻ろうと言うのか。きっと彼は真実を知らないのだろう。いつものように、戦いの真実を……いくら戦ったところで、全て白紙に戻って繰り返されるのだということを教えてやる。
 暫らく黙りこくっていた少年は小さくため息をつくと、何故か笑っていた。それは、諦めにも似た笑みだった。

「なーんだ」
「……何が可笑しい?」
「……ココも、俺の世界とおんなじ様なモンなんだなって、思っただけッス」

 今度はこちらが黙ってしまう。
 同じ、とはどういう意味なのだろう。彼もまた、何度も繰り返される世界にいたのだろうか。それとも、何らかの螺旋に囚われてしまった世界だったのだろうか。

「じゃあオレ、尚更戻んなきゃ! ずっとそこに留まってる世界なんて、駄目ッスよ!」

 だから早く道教えて!と言う少年の瞳には、強い生の力が宿っていた。そして、別のものも見えてしまった。

「……螺旋を断ち切る夢、か」
「はぁ? 何言ってんスか? 早く道教えてくれよ! ……あ、もしかしてアンタも迷子だったんスか!?」

 失礼な事を言う子供に剣を向ける。ここを抜け、戦場に戻るならば自分を倒さなければならない。
 本能的に悟った少年も剣を構える。その動きに迷いは感じられなかった。

「こい、夢想の少年よ。あの戦場に戻れるだけの力があるのか、私がジャッジしてやろう」
「……上等ォ!」

 にっ、と笑った少年に少しだけ希望を抱いてみた。

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