ラスボスは『父』

魔法と剣が交差するガレキの塔。ガラスの破片が飛び散る中で激しい攻防を繰り広げているのはティーダ、スコール、クラウドの三人と、イミテーションを従えたケフカだ。

「ほらほらほらァ!!」
「んな攻撃効かないっつーの!」
「ティーダ! あまり突っ込むな!」

 EXモードでパワーアップしたティーダは走っているだけで弱い魔法を跳ね返してしまう。速攻と言わんばかりにケフカへ駆けていくティーダにクラウドが警告し、スコールも援護のために走る。
 ティーダの攻撃を紙一重でかわしつつケフカがにやぁと笑みを浮かべた。

「かかったかかったッ! 単純でイイですねェ」
「んだとっ! これでも食らえっ!」
「ティーダ待て!」
(ッ……邪魔だっ!)

 イミテーションに足止めされてしまったスコールが舌打ちする。

「ハズレー!」
「ッわ……やば……!」

 エナジーレインの蹴りをかわされ体勢を崩したティーダにケフカが容赦なくはかいのつばさを突き刺す。絶望の衝撃で力が削られ、魔法も跳ね返せなくなり……。

「食らえーッ!」
「ッ――!!」
「「ティーダ!!」」

 放たれた光をもろに食らったティーダがその場に崩れ落ちる。イミテーションを吹き飛ばした二人が駆けつけるがぐったりとしたままだ。そんなティーダの様子に何故かケフカが首をかしげているが、相変わらずにやにやと嫌な笑みを浮かべている。

「貴様ッ……!」
「んん~? おかしいですネェ……ま、いいでしょ。後で見に来てアゲルからねーっ! バイバーイ!」

 魔法の爆風と共に消えたケフカの笑い声が木霊する中、クラウドがティーダを抱き起こす。苦しそうだが意識はある。本拠地へと急ぎながら、クラウドもスコールも妙な不安を感じていた。

――――――

「はァ……ッ……はぁ……」
「ティーダ……」
「ん……ごめ……クラウド……無茶しちゃっ、て……」
「……もう一人で突っ込むな」
「すこーる……」

 苦しげな息の中、警告を聞かなかった事をティーダが謝る。警告を聞かず無茶をしたことに対しては二人共怒っていたが、取りあえず無事であることに安心してもいた。今は治療が先だが、ライトには後からこってり絞られるだろう。

「苦しいのか? ティーダ……」
「ッ……、は…………体……あつ、い……」

 ベッドの上で横になり、苦しげに胸元の服を握り締める姿は見ていて辛い。あの光を浴びてからずっとこの調子で、フリオニール達も薬や粥を作ってくれてはいるが一向によくならない。
 不安を感じつつ看病しているが、一つ問題があった。

「はぁ……、は…………ん……」
「「………………」」

 うっすらと汗ばみ紅潮した肌。吐き出される湿った吐息。熱のせいか僅かに潤んでいる瞳。
 不謹慎だと頭でわかってはいたが、ティーダに密かに好意を抱いている二人には耐え難いものがあった。ちらりと覗く赤い舌が
「なかなか扇情的だな」
「「………………」」
「どうしたクラウド。お前も手を出したいと思っているのではないのか?」
「その前にどっから入ったアンタ」

 いつの間にか部屋の中にいたセフィロスに突っ込むが、部屋が狭いため武器を構えることはできない。しかしセフィロスがティーダに目をつけるようになってからというものこんな事はよくあるので、ティーダに近づけさせないよう威圧するのも手馴れたものだ。
「フッ……ティーダのいやらしいオーラに誘われて来て見れば……あの道化もなかなか面白いことをする」
「何の話だ」
「というかティーダをアンタのいやらしい目で見るな、穢れる」
「お前達も似たようなものだろう」

 普段は冷静な二人も、ティーダが絡むと怒りのオーラを隠しもせずセフィロスを睨みつける。が、セフィロスの言う事も強ち間違いではないので強くは言い返せなかったりする。
「まったく……据え膳食わねばという言葉を知らないのか?」
「アンタと一緒にするな。俺達はティーダを大事に想っているんだ……」
「獣のように襲えばいいというモノではない」
「獅子も狼もその程度か」
「何……!」

「ッ……ん……!」

 話に夢中で一応ティーダに意識がある事も忘れていた三人だったが、苦しげな呻き声に一瞬で我に帰る。
 幸いうなされていたティーダは会話の内容を聞いていなかったが、今まで以上に苦しげな様子にクラウドもスコールも慌てた。額に浮かんだ汗を濡れタオルで拭うと驚くほど熱い。

「あ……はぁッ……はぁ……んん……ッ」
「ッ……ティーダ、しっかり……!?」

 突如ティーダの体が淡い光に包まれる。それはすぐに収まったが、代わりにとんでもない変化が三人を激しく動揺させた。

「ん……あ、れ……?」

 むくりと体を起こしたティーダはきょとんとした顔で額に手を当てたり、深呼吸している。やがてぱぁっと顔を明るくすると勢いよくベッドから降りて立ち上がった。

「クラウド、スコール! 何かよく分かんないけど体めちゃくちゃ軽くなったッス! 苦しかったの嘘みたい! 心配かけてゴメンな」
「「「………………」」」
「ってアレ!? 何でセフィロスもいるんスか!? ……って言うか三人ともどうかした?」

 無言で自分を凝視してくる三人を怪訝な顔で見つめ、その視線を追ってみた。その視線は胸元に集中しているようだが、全身をくまなく見られているようでティーダも自分の体を見る。

「ん?」

 腕を見ると、日に焼けた浅黒い肌がいつもよりほんの少し白く、筋肉も薄くなっている気がする。というよりは、全体的に細身になっている。
「あれ?」
 先ほどから薄らと違和感のあった声は少し高い気がする。服も何だか大きく感じて、一番見られている胸元へと視線を落とすと。

「え……?」
 胸元が開いた服から覗くのは胸筋ではなく、手のひらにすっぽり収まりそうな二つの膨らみ。

「…………ええええええええ!?」

 ティーダの絶叫が秩序の屋敷に木霊した。ケフカの放った魔法は攻撃ではなく、体を女性化するものだったのだ。自分の体を見てパニックに陥っているティーダを他所に、スコールとクラウドも混乱しながら理性と戦っていた。

「なんでっ? なんでっ!? オレ女の子になっちゃったッスか!? あ、頭ぐるぐるするっ……!」
(……可愛い可愛い可愛い可愛い)
(…………いい形だな……)
「………………」

 混乱するティーダと、黙ったままティーダを見ている三人。傍から見れば異様な光景だ。
 そんな中セフィロスが動きティーダの前に立つ。慌ててクラウドとスコールが引き離そうとするが時既に遅く。
「な、なんスかセフィロ」

ふにゅん。

「ひえッ!?」
「……小さいな」
ふにゅふにゅ。
「うあっやッ……やめ……!」
「だがいい形だ。安心しろ、大きくしたいなら私が揉」

「「そこに直れこのイカぁぁぁぁぁぁ!!!」」

 ブチ切れてEXモードになった二人がティーダの小さな膨らみを揉んでいるセフィロスに飛び掛る。怒り半分、羨ましさ半分と言った所である。
 セフィロスがティーダを抱きかかえて攻撃を難なくかわした所で、騒ぎを聞きつけたフリオニールが部屋に飛び込んで来た。

「どうした! 何の騒ぎっ……」
「ふ……フリオ! 助けてくれッス!」
「………………ゴクッ……」
「何がゴクっスか馬鹿のばらーーー!!」

 セフィロスに抱えられたままもがくティーダの服は女性体になったせいでいつもよりぶかぶかで、胸元がいつも以上に開き気味になっている。
 柔らかな曲線を描く胸に女性経験のないフリオニールが反応してしまうのは仕方が無いと分かっていても文句を言わずにはいられなかった。
 そうこうしている間にも余裕たっぷりにセフィロスがティーダを抱えなおし、スコールとクラウドはじりじりと距離を詰めていく。

「ククク……男のままでもいいが、女のお前も愛らしいな」
「や、止めろってば……! 顔近いッ!」
「案ずるな……優しく奪ってやる」
「何をッスかあぁぁぁ!!!」
「いい加減ティーダを離せセフィロス!」
「……ティーダに手を出せば息の根を止める」

 本気で怯えているらしく涙目になっているティーダを見て俄然闘志が燃え上がる二人。何としてでもティーダをお持ち帰りしようとしているセフィロスを倒さねばならない。
 するとセフィロスがティーダを腕から降ろした。一瞬きょとんとしていたが、慌ててクラウド達の元へ走っていく。正宗を顕現させ、壁を破壊したセフィロスがスコール達を外へ誘う。

「ならば力ずくで奪い去ろう。お前達を倒した後でティーダをゆっくりと愛でてやる」
「させるか……!」
「倒されるのは貴様だッ……」

 勇ましく武器を構えて飛び出していった二人の背中を呆然と見ているティーダの元に、フリオニールと少し遅れてやってきたセシルが駆けつけた。

「ティーダ、大丈夫かっ!?」
「わ、どうしたのその体……」
「……っ~~せしるぅぅぅ!!」

 涙目で抱きついてきたティーダをよしよしとあやす様に撫でる。自分の方に来なかったのがショックだったのか、行き場のなくした手を少し恥ずかしそうに降ろしながらフリオニールが大まかな事を説明した。
 その間にもぞろぞろと仲間達が集まってきて、ティーダの体が女性になってしまったことがあっという間に知られてしまった。
 もともと胸元が全開だった服のせいで、小振りだが形のいい膨らみが惜しげもなくさらされてしまう。服を引き寄せて隠してはいるがやはり恥ずかしいのか頬を染めて泣きそうである。

「うぅ~もうオムコに行けないッス……」
「大丈夫だよティーダ、すごく可愛い。クラウドやスコールがお嫁にしてくれるよ」
「ティナ、それフォローになってないよ……」
「なぁなぁ下ってどうなっt「ちょっと黙ろうかバッツ」」

 思い思いに話し合っているコスモス勢と、更に落ち込んでしまったティーダの事も知らず、三人の男達は戦いを続けていた。

「くっ……いい加減諦めたらどうだセフィロス!」
「お前達こそ……大人しくしていれば共有しても構わんのだがな」
「共ゆ…………ティーダは物じゃない、俺(達)の大事な」
「おい待てスコール、俺のとは聞き捨てならないな」
「俺『達』と一応言ったがな……(心の中で……)」
「やはりお前とも決着をつけておくべきだったか……」
「ふ……仲間割れとは憐れな……」

 ついに仲違いし三つ巴の戦いとなってしまった。激しい戦いのせいで秩序の館は三分の一ほど破壊されてしまっている。
 最早この戦いは止められないのかと皆が諦めかけていた時、戦いに乱入した男がいた。それは……

「おいコラてめーらァ! うちの息子……ん、娘か? まぁいい、オレ様のガキを泣かすとはいい度胸じゃねぇか、ああ!?」

 手にケフカらしき何かを引きずって登場したジェクトが今だけは救いの神に見えた。

「覚悟は出来てんだろうな、あ?」
「待て、俺達はセフィロスの毒牙からティーダを守ろうとしているだけだお義父さん」
「あぁ、ティーダを大事に想っているだけだ義父さん」
「まぁ私は既にティーダの胸を触った仲だがな義父さん」

「誰が義父さんだコラァァァァァ!!」

 粛清中――。

 数分後にはボロボロにされた三人と、娘となってしまったティーダの元へ向かおうとするジェクトと、半壊の秩序の館があった。ちなみに他のコスモスメンバーは既に退避済みだった。

「おーおー可愛らしくなっちまってジェクトさんちのお坊ちゃんは」
「……なんか、もーどーでもいいッス……」

 ひげでチクチクするジェクトに頬ずりされながら諦め気味に自分の体を眺めるティーダ。派手にやられたクラウド達はその光景を見ながら、やはり最強の敵は父親だったと再認識した。
 しかし、皆の生活を守る秩序の館を壊されて彼が黙っているはずがなかった。

「……お前達、覚悟はできているのか?」
「あぁん?」
「ライト……」
「ティーダは離れているといい」

 即座に安全な場所へと移動させられるティーダと残されたジェクト達(ケフカらしきもの含む)。スコールとクラウドはこの後の展開が容易に想像できて諦めたように深い深いため息をついた。

「ティーダの体をあんな風に変化させ混乱を招くだけでは飽き足らず……コスモスが我らに与えてくれた館まで破壊するとは……! コスモスに代わり私が怒りの鉄槌を下そう!」
「え、ちょっと待てオレ様はコイツらを止めた」
「館を破壊したのはお前も一緒だ、ティーダの父親だろうと赦すことはできない! 受けてみよ!」

「「「「ウボアァァアァ!!!」」」」

 次の日から、館の修理のために駆り出される男たちの姿があった。

――――――

あとがき。
初の女体化です。相変わらずギャグが滑っている感が酷いです。どうやったらギャグが書けるでしょうかorz
ネタの泉で頂いた『クラ、スコ、セフィによる女体化10争奪戦』を書かせていただきました。たぐ様ありがとうございました!
ネタ内容を省略していますが、本当は話の具体的な流れ(ケフカに悪戯される、セフィが乱入してくるなどなど)も書いてくださっていました。妄想しやすく、楽しく書かせていただきました(笑)
誰オチなどは書かれていなかったのでオヤジ&WOLオチにしました。ライトさんはお父さん属性だと思ってます。なのでティーダには二人のお父さんに守られています(笑
個人的にふにゅふにゅが書けて幸せです変態で申し訳ありませんorz
余談ですが、別の方から頂いてる女体化ネタはこの話の続きっぽい感じになる予定でクラティ(クラ→ティ?)オチです。ネタ下さった方はご安心ください~。
微乳で美乳がお好きな方が自分以外にもいて嬉しかったですv最後まで読んでくださりありがとうございました!

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