世界は争いで満ちていました。
たくさんの人が傷つき、命が失われていきました。
神々はそれを嘆き、悲しみ、その涙は一つの海を作り、その怒りは暗雲を呼び寄せました。
神々は、争いの絶えない世界を見ることを止め、その海に新たな世界を作りました。
争いもない、楽しく平和な世界を。
――――――
『時々でいいから、思い出してくれよな』
そう言った彼は、いつもより少し、寂しげだった。
「おーいリーダー! 聞いてる!?」
「……ああ、すまない」
あの秩序と混沌の世界の戦いを終わらせ、今またこうして世界を救う旅をしている男は緩く頭を振った。
記憶の無い自分にとって、あの世界で体験したこと、共に戦った仲間達との思い出はかけがえのない大切なものだ。
未だに自分の過去を思い出すことはないが、だからこそ彼らとの記憶は大きな支えとなっている。
今共に旅をしている仲間ももちろん大切だ。先を行く彼らの後を追いながら、あの世界の仲間達一人一人の顔を思い浮かべ、ふと足が止まった。
(……八人?)
もう一度、思い出す。一人一人、名前と、顔と、数えながら。
(……誰だ……)
ぽっかりと、削り取られたように思い出せない。共に旅をしたのは九人。思い出せたのは、八人。
忘れない。忘れるはずがないのに。忘れるものかと誓ったはずなのに。
「もーっ、しっかりしてよリーダー!」
仲間に叱咤されながらも胸が掻き毟られるような焦燥を感じる。必死に、いたはずのもう一人を思い出そうとしていた。
――――――
見捨てられた世界には暗雲が残り、皆に力を与える太陽も覆い隠しました。
そして、嵐がやってきました。
雷が落ち、津波が町を襲い、風が全てを吹き飛ばしました。
争いをしていた時よりももっと多くの命が奪われ、ようやく人々は争いをやめました。
神の怒りが治まるように、皆で手を取り合い、祈りました。
神はもう見ていないのに。
――――――
『のばら!』
そうして、変なあだ名をつけたのは――。
「ママ見て! ここものばらがいっぱい!」
「本当にこの国はのばらがよく咲いているんですね」
違う土地からやってきたらしい親子に話しかけられる。
戦争が終わり、少しずつ復興していく町に、国の象徴であるのばらを植えようと言ったのは自分だ。
のばら咲く世界。平和の象徴としてそんな世界を作ることを、あの世界で戦った仲間達とも約束した。
今はまだフィン王国の一部だけだが、そのうち他の町にも花を贈るつもりだ。そう話せば子供は嬉しそうに笑った。
「ばいばい! のばらのお兄ちゃん!」
「はは……」
のばら。あの世界でも自分をそう呼んでいた……
「……え……?」
呼んでいた、のは……
「…………」
のばら。
小さく声に出したそれは、反乱軍の合言葉であり、国の象徴であって。そして、懐かしい響き。
記憶を揺り起こそうとするかのように、風に吹かれて花たちがざわめいた。
――――――
世界からは光が消え、人々からは笑顔が消えました。
偽りの笑顔で、嵐が去るのを待ち続けます。
何十年も、何百年も。
――――――
『あとで謝っても遅いからな!』
子供みたいな人だった。
「…………」
ぱちり、と木の爆ぜる音にハッとする。見張り当番だというのにうとうとしてしまうなんて、と歯噛みした。
簡易結界も張っているとはいえ、油断はできない。
――ふと、あの世界のことを思い出す。皆がまとまって旅をした時も、当番制で二人が見張りをしていた。
今と同じように、一瞬だけうとうとしてしまったのを茶化されて、暫くしたら向こうもうとうとしていたから言い返してやって。
彼は怒るでもなく、照れたように笑って頭をかいていた。
「……、あれ……」
思い出せる。記憶はあるのに、そこにいたのは誰だったか思い出せない。
まるで夢でも見ていたかのように。
――――――
ある日、神が小さな海の世界で遊んでいると、一人の男が、見捨てた世界に放り出されてしまいました。
男はその世界で、皆のために嵐を消そうとし、逆に嵐の中へ囚われてしまったのです。
神々は嘆き、ようやく自分達のした過ちに気付いたのです。
しかし、千年もの間世界を壊し続けた嵐は、そう簡単に止められるものではありませんでした。
そこで神々は、小さな太陽を世界へ送り出し、人々に力を取り戻させ、嵐を消そうとしました。
小さな、仮初の太陽を。
――――――
『バビュっと行ってこいって!』
そう言って、背中を押してくれた。
「陛下、そろそろ会議の時間です」
小さく返事をしてペンを置く。国を治めるのは当然簡単なことではなくて、毎日毎日激務に追われている。
それでも、支えてくれる人達がいるお陰で上手くいっている。
他人の力をあてにするのはよくないことだけれど、力を合わせればどんな事でも乗り越えられると、あの世界でも学んだのだ。
「皆元気かな……?」
特によく一緒に行動していた三人。タイプは皆違ったけれど、とても楽しかった。
口数は少ないが冷静で頼りになる彼、のばら咲く平和な世界を願う青年、兄と話して来いと自分を応援してくれた、弟のような存在の――
「…………どうして」
いくら記憶を探っても、その存在が、なかったかのように。
――――――
小さな太陽は、その世界で出会った月と共に慣れない世界を巡りました。
太陽の光は命の源。月は希望と安らぎを。彼らが巡った場所の人々には笑顔が浮かびました。
しかし、嵐に遭遇すれば太刀打ちすることができず、また笑顔が消えることもありました。
けれど皆の願いはただ一つ。あの嵐が消え去ることでした。
――――――
『へっへ~ん! 新しい技、マネできるッスか?』
いつも元気で人懐っこくて、犬みたいなやつで。
「クエー」
「ん? どした?」
相棒が顔を寄せてきて、草むらに寝転んだまま撫でてやる。
戦いが終わり、仲間達と別れて昔のように一人旅。懐かしむこともあるけれど、一人は一人で楽しいものだ。それに相棒もいる。
「わんっ」
「お、友達か? わっ、くすぐったいって!」
どこからやってきたのか、犬が顔を舐めてくる。どうやら相棒は彼を紹介したかったらしい。
「わんっ」
自分で持ってきたらしいボールを鼻で押してくる。きらきらした瞳で見つめられては敵わない。
「はは、分かった分かった、それっ!」
「わんっ!」
ボールを投げると犬は風のように走り始めた。
「あいつもボール持って走り回ってたよなぁ……」
人懐っこくて明るい、大型犬みたいな。
彼の世界のスポーツで使われるボールを用いた独特の戦闘スタイルは容易にはマネできなくてちょっぴり悔しく思って。
「ん……」
ボールって、どんな? ……あいつって?
「……なあボコ、俺さ、話したよな」
「クエ」
「……違う世界で出会った奴ら……『九人』の話、したよな」
「クエー……」
相棒の寂しそうな声は、肯定だった。
――――――
小さな太陽は、皆で力を合わせて戦おうと呼びかけました。
一人では勝てなくても、嵐を消えることを望む皆が力を合わせればきっと勝てると。
そして世界中の人達が力を合わせると、雷は止み、風が弱まり、波が静まりました。
それまでは傍観者でしかなかった神々も力を貸し、小さな太陽と月の手によって、千年の間猛威を振るった嵐は消え去ったのです。
長い間嵐に囚われていた男も解放され、小さな太陽を見て笑うと、空に溶けていきました。
――――――
『ほらっ、こんな時こそ笑顔の練習!』
いつも皆に、元気を与えてくれた。
「…………」
誰もいない丘で一人、目を閉じて風を感じた。
その生まれ故に感受性が強いから、この異変も感じとっていた。
「……やっぱり……」
思い出せない。確かにいたはずなのに、いなかったかのように切り取られぼやけた記憶。
『彼』の記憶だけが抜け落ちている。
小さな歪みを感じたのは数日前の事だ。否、この世界で感じたことだから、別の世界ではもっと前、あるいは未来の出来事かもしれないけれど。
それは本当に僅かなもので、世界に影響するようなものではなく、違和感を感じながらも普通に過ごしていた。
そして気付いた。確かにそれは、世界にとって何の影響もない些細なことかもしれない。しかし――
「…………」
こんなにも覚えているのに、姿も、名前すら思い出せない。
――――――
雲が消え、空の青が見えた時、人々は歓喜の声を上げました。
それにつられるかのように、水平線から本物の太陽が顔を覗かせ、人々は更に沸き立ちました。
それを見届けた神様達は、楽しみしかない小さな世界を見ることを止め、この世界を見守るようになりました。
二つの世界を見ることはできない。
悲しみしかない世界も、楽しみしかない世界も駄目なのです。
どちらも必要で、大切なのです。
――――――
『ウダウダしないでさ!』
そんな彼が、少し羨ましかった。
「クラウド! 怪我はもう大丈夫?」
「あぁ、心配かけたな」
セフィロスの思念体との決着をつけた後、『彼女』のお陰である程度怪我も治っていたが大事をとって休めと言われ数日。
ベッドから抜け出すと外で瓦礫片付けの手伝いをしていたらしいティファが帰ってきていた。
無理はしないでね、と言いつつ飲み物を取りに行く。
椅子に腰掛けるとふと先ほどまで見た夢を思い出した。異世界で戦った仲間達の事。
……一人の記憶が欠けていることには気づいていたが、どうやっても思い出すことができなかった。
「……どうしたの? 大丈夫?」
「……大丈夫だ、考え事してた」
「あまり考え込みすぎちゃ駄目よ? またずるずるされても困るんだから」
冗談っぽく笑ったティファの言葉に記憶を刺激される。彼にもよく、似たような事を言われていた。
『クラウドはちょっとネガティブに考えすぎッスよ!』
悪く言えば考えなし、良く言えば前向きな彼の姿勢は少し見習いたいものだと思っていた。
「クラウド!」
「っ」
自分の名を呼ぶ元気な少年の声。彼のはずはないのに、名前を呼びそうになって、しかし音になることはなかった。
「……デンゼル」
「元気になったら剣の稽古つけてよ、今日小さいモンスターが出てきてさ!」
『明日修行に付き合ってほしいッス!』
――嗚呼、彼を思い出させる要素がこんなにもあるのに、千切れた記憶は未だ埋まることはない。
――――――
夜明けと共に、小さな海の世界は消えていきます。
そして、役目を終えた仮初の太陽もまた、消えていきます。
一つの世界に、二つの太陽は存在できないから。
――――――
『言いたいことは言っちゃえよ!』
お前は口に出しすぎだ、なんて思っても、やはり口には出さなかった。
「はんちょ! こっちは終わったよ~!」
戦いの最中だというのに、その空気に似合わないのんびりとした声。
最早慣れてしまったが、その慣れは意外とあの異世界では役に立った、のかもしれない。
一人でいたいと思っても、いつも周りがそうさせてくれなかった。
年上とは思えない男や、年下で小柄だが妙に大人な面もある少年。彼らの掛け合いはいつも賑やかなもので、戦闘中もそうだった。
そこに同い年のあいつが加わると更に賑やかになって――だが嫌いではなかったあの空間。
「…………」
(そう、同い年……だった……驚かれて、俺も、驚いた。老けてるとか言われた。お前が幼いんだろと思った。そうしたら勘付かれて、あいつが怒って、)
記憶の欠片は見つかるのに、それはどれもバラバラで歪で、ちっとも一つになりはしない。
――――――
喜びに湧く人々はそれに気付きません。
月と、神々はそれを見ていました。
残酷な運命を強いたことを謝りながら。
――――――
『それ尻尾? 本物? 触ってもいいッスかっ!』
あの世界の説明をしていたのに初めからそんな調子で、思わず笑ったものだった。
「んー……」
羽ペンを一度置き、頭の後ろで手を組んで天井を見上げる。
椅子ごと倒れてしまわないように適度にバランスを保ちながら思考を巡らせた。
今書いていたのは、次にタンタラスでやる演劇の脚本だ。
あの世界であった事を、演劇という一つの形にしてみたくなったのだ。
自分で一から作るのとは違い、記憶を元にして書いているから幾分か楽だとは思ったのだが、現実はそうもいかない。そして、
「…………」
あの世界で出会った大切な仲間達。誰一人欠けても混沌の神に立ち向かうことはできなかった。それなのに。
「……んで……思い出せねぇんだよ……」
この物語には、皆がいないと駄目なのに。
「……休憩すっか」
立ち上がり、大きく伸びをしたところで、ふっと浮遊感に包まれた。
「へ……うわああぁぁっ!?」
意識を失ったのか、自分が暗闇に包まれたのか、突然真っ暗になった世界で重力に従い降下していった。
――――――
気がつくと、そこは懐かしい場所。そして仲間達の姿。
「皆!」
「お前達なんでこんな所に……」
「そりゃこっちのセリフだっての!」
思わぬ再会に戸惑いつつも皆喜び、老けたか?なんて冗談も言い合った。
一頻り喜びを分かち合った後、先ほどまで笑顔だったティナが少し不安そうな顔でおずおずと切り出した。
「ねえ……皆は……その」
「どうしたの? ティナ……」
「…………」
ティナの言わんとしたことが分かったのか、クラウドが皆の顔を見て聞く。
「……お前達は、覚えていないのか?」
何を、と訊ねる者はいなかった。つまりそれは、全員そうだということ。
欠けた記憶。それは共通して、『彼』のことだった。曖昧な記憶でも、皆が覚えていることを寄せ集めて、一つにして。
時々思い出してくれ、と言った。
のばらというあだ名を作って
年上のくせに子供っぽくて
背中を押してくれた
犬みたいに人懐っこくて
元気一杯で、皆にそれを分けてくれて
やたら前向きで
よく喋って
時々ちょっと空気読めなくて
太陽みたいに眩しい笑顔の――
誰ともなく、その名が口をついて出た。
『ティーダ』
「皆さん……そろっていますね」
「コスモス!」
自分達を呼んだであろう神が光を纏って舞い降りる。
皆すぐに駆け寄った。揃ってなどいない、大切な仲間が一人いないのだから。
「コスモス、なんでティーダだけいないんだ?」
「それに、今まで皆ティーダのことだけが……思い出せなくて」
口々に問われ、コスモスは静かに瞳を伏せる。その表情は、悲しげにも見えたし、皆がティーダを思い出せたことに安堵しているようにも見えた。
全員に真剣な眼差しで見つめられる中、彼女は何を話すべきか思案した。
「……ティーダは、いません」
「だから、どういう……」
「……少し、お話をしましょう」
小さな太陽の、御伽噺を。
――――――
泣き虫だった小さな太陽は、それでも、泣きそうになりながらも笑って
水平線へと消えていきました。
――――――
「ねえコスモス、その話……」
コスモスが口を閉じ、僅かな沈黙が降りるとオニオンが問う。その瞳は不安と悲哀感に彩られている。他の者も同じだった。
彼女が話した御伽噺が、何であるのか。分からないはずがない。
抽象的な御伽噺ではあったし、本当にそんな出来事があったかなんて確かめようもないけれど、その結末は理解できた。
でも、だってそれでは彼は、
「消えた……のか……?」
「…………」
コスモスは答えない。より真実に近い答えを言葉にすれば、それは何より残酷だった。
だって彼は、『元々存在しない』のだから。
「あの時……小さな太陽が消えた時、本来は関係のない貴方達の世界にも僅かな干渉が起こりました。 本来は持っていないはずの記憶を持った貴方達の周りに僅かな歪みが生じ、関係する記憶だけが、修正された」
『彼』の世界自体は、ただ彼が「いなくなった」だけだ。彼と旅をした者、出会った人々は彼の記憶がある。
しかし、世界は歪みを修正する。本来であれば異世界で戦った記憶を覚えていられること自体が奇跡だ。けれど、彼らが元の世界に帰った後で『彼』は消えた。 その歪みを、見逃してはくれなかった。
「本当は……全員を呼び寄せたかった。貴方達を再会させ、もう一度お礼が言いたかった。でも……あの子はもう、私の力が届かない場所に行ってしまったから……」
「コスモス……」
「ありがとう……闘いを終わらせてくれて。そして……彼を、思い出してくれて、ありがとう」
光に包まれ、僅かずつ消えていく神の姿を戦士達が見守る。皆を代表するかのように、光の戦士が前へ出た。
「それは、こちらの台詞だ、コスモス。もう一度、皆と会わせてくれて、ありがとう。貴女がいなければ、我々はこの記憶を、取り戻せなかったかもしれない」
コスモスはゆるりと首を横に振る。その表情は微笑みだった。
「どうか、忘れないで――。その記憶こそが――」
彼女の姿が消えた後、戦士達もまたその姿が薄れ始める。
「もう、か。本当、楽しいのってあっという間なんだよな」
周りの景色も消え、来た時のような暗闇に包まれる。自分の手や体は見えるものの、他の仲間達の姿は確認できなくなってしまった。
「いつかまた、会えるよね?」
「……でも今度会う時はさ、ちゃんと……」
「ティーダも、一緒に」
「……ティーダ……本当に、消えちゃったの?」
ティナの声が僅かに震える。だって、そんな結末なんて、納得できない。
――会いたい。どんな苦境でも吹き飛ばせそうな、太陽のような笑顔に。
皆がその姿を脳裏に描いた時――ふわり、となにかが降り立ったような、気配がした。
『……もー、皆やっと思い出してくれたッスか!』
もちろんそこに姿があるわけではない。でも確かに、全員がその気配を感じていた。それは紛れもなく
「ティーダ!」
あのウォーリアでさえ驚いている気配。それに気付いたのかティーダが笑う。
それはあの頃と全く変わっていなかった。
「ティーダ、ティーダは……あの……」
『うん、ごめん。消えちゃった』
「消え……って、お前なぁ……!」
あっさりと言うティーダにフリオニールが思わず声を荒げる。こんな時でも相変わらずの彼に、呆れと、懐かしさで喉が震えた。
本人が認めたその事実に歯噛みする。どうして。何故。だって、理不尽じゃないか。
『でもさ、皆思い出してくれたし、こーやってなんとか会えただろ!』
「……お前は……それで……」
言葉にすることが少ないスコールも口を開く。こんな時でも笑っている彼が、本当は涙脆いくせに笑顔を見せる彼が本当は、心配でたまらない。
『はは、いいわけないじゃん、ばか』
「……、悪い」
『……ああもう! 時間ないから手っ取り早く言うッス! 皆、笑顔の練習ー!』
「おま……こんな時まで」
『こんな時だからッス!』
そんなやり取りが懐かしくて、つい頬が緩んだ。つられるように、笑ってしまったり。
『うんうん、笑顔のがいーッスね! でさ、これは俺からのお願い……っつーか、わがままなんだけど、さ…………忘れないで欲しいんだ。時々でいいからさ、思い出してくれたら、それでいいんだけど……』
そんな、あまりにささやかな、わがまま。
「……安心しろ、もう忘れない。言われなくたって、誰が忘れてやるか」
『へへ、ありがとクラウド。……うん、皆が覚えててくれたらさ、いつかまた会えるから』
「でも、どうやって……」
『無限の可能性ってヤツっす!!』
「ティーダらしいな」
皆が笑う。目では見えなくても、皆の脳裏にはあの世界で旅をした時と同じ光景が広がっている。
苦しかったことも楽しかったことも、辛かったことも嬉しかったのも全部、覚えているから。
「――ありがとな」
次第に薄れていく感覚の中で、上擦った嗚咽が聴こえた。
「ティ……」
『……大丈夫だって! あの時も言ったろ! 俺は、』
―『ここ』にいるから―
――――――
「…………」
気付けば、机に突っ伏して眠っていたようだった。
体を起こせば書きかけの脚本。
「…………ん」
『彼』が示した場所が、ほわりと暖かくなった。
部屋の外からノックと、仲間の声が聞こえる。
「なぁ――」
にぎやかに部屋に入ってきた仲間に背を向けたまま、先ほどと同じように頭の後ろで手を組み、天井を見上げる。その顔には笑みが浮かんでいた。
「脚本、もう一本作るわ」
「ねぇ」
「ボコ、知ってるか?」
「こんな御伽噺」
――――――
けれど、小さな太陽は、まだ『ここ』にいるのです。
この物語を知る、全ての人の記憶に。
――――――
その記憶こそ、存在の証
――――――
あとがき。
最後までお付き合いくださりありがとうございました!
実はネタの泉でいただいた『戦いが終わってから、消えてしまう(消えてしまったでも可)ティーダについてみんながなにをかんがえるのか。寂しくて落ち込む皆の背中をそっとおしてはげますティーダ』
……を元に書いてみた……んですが……全然違う方向に行ってしまいましたorz
全然違うやんけー書き直せーというご意見がございましたらまた新たに書かせていただく所存でございます!(`・ω・´)キリッ
考察によるDFFの世界の仕組みとかガン無視状態の話ですみません!でも考察はあくまで一つの考え、が私の考えなので(´ω`*)
色々と台詞が飛び交っていて誰がどの台詞かわかりづらいものもあるかと思いますが各人思いついたキャラが喋っているということで一つよろしくお願いします~
それでは、こんなあとがきまで読んでくださってありがとうございましたー!