「っ……ぁ」
首筋にかかる熱い吐息にぞくぞくと悪寒が走る。
まだ少し、躊躇うような動作にじれったさを感じて、ティーダは回した腕に力を込めた。
「てぃ、だ」
「……いい、から……フリオ……」
挑発するように、早くしろよと笑ってみせると、フリオニールの喉が上下した。
再び首筋に顔を埋め、ざらつく熱い舌が這わされる。動脈を探るように時に圧迫し、肌を唇で軟く食む。
やがて覚悟が決まったのか狙いを定めたのか、抑えきれない興奮を滲ませた吐息と共に硬く尖った牙が首筋に当てられ、
「っ……!」
つぷり、と
「あ、あ」
それは痛みのはずなのに、ティーダの体にざわりと広がるのはえも言われぬ背徳的な快感だった。
「ひっ」
己の首筋に食い込む牙が恐ろしいはずなのに、ぞくぞくと走る快楽に背を撓らせる。
ふっ、ふっ、と耳元をくすぐるのはフリオニールの呼気。生き血を啜るのは久しぶりだという言葉通り、それに酔いしれていた。いつもの温厚な彼とは思えぬ力で無意識にもがくティーダの体を押さえつける。
フリオニールの喉がこくり、と上下する。飲まれている。生きている証を、生命の力を奪われている。その事に、どうしてこんなにも。
「ぅ、あっ……は……んッ」
「ティー、ダ……」
「あ、あぁッ!」
一度口を離し、傷口から溢れる赤を何度も舐め上げては再び牙を突き立てる。
その度にびくんと跳ねる体が自分のものではないような気さえしてくる。
(声……押さえ……れない)
これじゃあまるでセックスしてるみたいだ、と思ったところで、体に異物を入れられて善がっているのだから、これはもう擬似セックスと言ってもあながち間違いではないのだろうかと気付く。
その証拠に、二人ともとっくに下腹部には熱が集まっていて、服越しにも互いの熱が伝わりあった。
「ふり、お……ふりお……」
「ティーダ……」
薄らと目を開けると、生理的に滲んだ涙がぽろりと落ちた。
僅かに歪んだ視界に映るのは、口元を扇情的な赤で染めた相貌と、宵闇でもはっきりと分かる金の瞳。
どちらともなく寄せた唇。
噎せ返るような鉄錆の臭いは、二人をより一層興奮させただけだった。