宿敵。
もはや理屈では言い表せない程の、絶つに絶たれぬ因縁。
全ての人類に復讐すべく、星の頂点に立つのが自分の目的。しかし、元の世界の自分は肉体を失ってしまい、それはあの男のせいだった。
何度も邪魔をし、自分をライフストリームに送った男に復讐する。そして元の世界に戻った時、自分という存在を確たるものにする為に、あの男の記憶を利用する。
あの男に真なる屈辱と絶望を与えたい。記憶が薄れてしまわないように、忘れられない傷を刻み込まなければいけない。
何をしよう。どうすればあの男に忘れられない傷を、痛みを与えることができるだろう。自分と同じ程の絶望を味あわせてやれるだろう。
やがて男は、宿敵の傍に寄り添う存在に気付いた。
――――――
「はぁ――ッ!」
クラウドの放った斬撃が最後の敵を消し去る。と、同時に横に降り立ったティーダがにっと笑った。
「片付いたっスね!」
「あぁ……怪我はないか?」
「余裕ッス!」
クラウドはじっ、とティーダ見つめてから、徐に右肩を掴んだ。
「いッ……!」
「……ティーダ」
「ゔ……へ、平気だって」
眉根を寄せるティーダを尻目に傷の具合を調べる。地面に叩き付けられたのか、酷い痣になっていた。
ケアルをかけようとしたが拒否されてしまう。「へーきへーき!」の一点張りでさっと離れたティーダの背中を追った。
「ティーダ」
「だから平気だって……ってうわ!」
腕を引っ張り引き寄せる。わたわたと暴れる体を押さえながら耳元で囁いた。
「利き腕だろう……後から酷くなることもある。あまり心配させるな」
「んっ……わ、分かった! 分かったから耳元やめッ……!」
赤面し身を捩る恋人の額にん、とキスをすると体を離す。
ケアルをかけようと手をかざした時、よく知った闇を感じてティーダを抱えてその場から飛びのく。
「ッ……」
途端、先程まで立っていた場所が目に見えない剣圧で抉れていく。
「あいつ……!」
ティーダの視線の先、長い銀の髪を揺らし歩いてくる因縁の相手がいた。
「セフィロス……!」
微笑を浮かべこちらを見つめるセフィロス。バスターソードを構えると隣でティーダもフラタニティを構えた。
「何を恐れている?」
不意の問いかけに戸惑うが、振り払う。あの男の言葉は、人を惑わせる。
「ティーダ、無理はするな」
「うん」
ぼそりと小声で会話する。横目で見るが、剣を握る手もどこか弱弱しい。この場は何とか持ち堪えて逃げを打つか。
そう考えていると、周囲の空気が変わる。びり、と肌に伝わるほどの殺気。本気、なのか。
「『それ』を失うのが、恐ろしいのか」
再び問いかけたセフィロスが指した先には、海色の目を見開いたティーダがいた。
「何、を」
「『それ』がお前の、最も大切なものか」
喉の奥でくつくつと笑う男に寒気を感じる。ちゃり、と柄を持ち直す音が聞こえて反射的に叫んだ。
「逃げろティーダッ!!」
そのまま刀を振ろうとするセフィロスへと突っ込んだ。金属のぶつかり合う音が響き、弾かれて後退する。
「クラウド!」
「くッ……いいから逃げろ! 奴の狙いはお前だ……!」
剣を構えて自分を庇うように立つティーダに怒鳴る。すると、男が心底楽しそうに笑った。
「く……クックック……いい姿だな、クラウド」
再び刀が降り下ろされ、二人共飛びのく。見えない太刀筋が服や肌に細かい傷を作っていく。
セフィロスは完全にティーダを標的にしたらしく、走り寄り技を放った。
何とか剣で受け止めるものの、先程の肩のダメージがあるのか今にも押し負けそうだ。
「ティーダ!」
体勢を立て直しバスターソードを構え走り寄る。
「っ……!」
「………………」
くっとセフィロスの口角が上がる。軽がるとティーダの剣を弾くと右肩をドンッ、と突いた。
「っ、あ゙ぁ……ッ!!」
それだけで簡単に倒れてしまい、蹲り脂汗をかきながら肩を抱えるティーダ。すぐさまセフィロスは振り返りクラウドに応戦する。
「……あれを傷つければ、お前は憎むか? 絶望するか?」
「セフィロス……!」
何度か剣を打ち合うも、余程焦っているのか思うように戦えない。そうこうしている内にじわじわと追い詰められていく。
「案ずるな、簡単に殺したりはしない。殺してしまっては、それ以上の苦しみを与えられないからな……」
「……ッあんたは……ぐあぁっ!」
腹部に強烈な蹴りを入れられ、壁に激突する。痛みに呻きながら耐えようとするが、次第に意識は遠のいていく。
「てぃー……だ……」
ティーダがセフィロスに抱えられたところで、ふつりと記憶が途切れた。
――――――
「――――っ」
意識が浮上する。ここは、どこだろう。視界が暗くてよく分からないが寝ている状態らしい。ぼんやりとした意識のまま身じろいだ。
「っ! あ、ぅ……!」
途端右肩に激痛が走り仰け反る。そして思い出した。クラウドと一緒に戦っていて、肩を痛めて、ケアルをかけようとして……。
「気が付いたか」
「っ」
不意に聞こえた低い声。先程まで戦っていた相手。クラウドの因縁の相手。
「セフィロス……っ……?」
がちゃり、と金属の音が聞こえる。そこでようやく気付いた。
両手が自由に動かせない。がちゃがちゃと耳障りな金属音が聞こえるだけだ。頭上で一つに纏め上げられ、手錠、あるいは鎖で固定されている。
視界が暗いのはどこか明かりのない場所にいるからだと思ったが、目隠しをつけられているようだった。
恐怖心が、芽生える。
先程話しかけてきた男も、気配はすれど姿は見えず、ただくつくつと笑う声が聞こえるだけだ。
「何が……目的、だよ……」
震えてしまわないようにぐっと体に力を込める。それでも相手にはばれているのか、セフィロスは鼻で笑う。
ぎしり、と音がして体が揺れる。おそらくベッドの上に寝かされているのだろう。ふいに吐息が頬にかかって、びくりと体が震えた。
「恐れるな……殺しはしない……」
「ッだから! 何がしたいんだよアンタは!?」
セフィロスは黙ったまま、ただベッドのスプリングが軋む音が聞こえた。
――ぐっ、と。右肩に手を添えられて、短い悲鳴が上がる。直後唇を噛み締めるが、敵に良い様にされ、情けなく悲鳴を上げてしまった事に赤面する。 羞恥と、悔しさが入り混じり、睨みつけてやりたいが目隠しのせいでそれも叶わない。
しかしそんな感情はすぐ痛みで消え去ってしまう。次第に力が込められていく手で痛みが増していく。全身から汗が滲んだ。
息を詰め、唇を噛み締める。ようやく手が離されると大きく息を吐き出した。息を荒げてしまうのが悔しい。
「お前を痛めつけ、辱めれば、さぞあの男は取り乱すのだろうな」
「な、に…………」
「……お前にも絶望を与えよう」
そう言うとセフィロスはするりと頬をなでた。前々から気に入らなかった、その太陽のような笑顔を持つ少年に向かって。
「その顔を曇らせてやろう」
ぎしり、ぎしり。
軋むベッドの上の少年に、逃げ道などなかった。
――――――
そして後編へTU・DU・KU!別にここで終わってもいい気もしますが(笑
このあとクラウドが助けにきて云々~みたいなね。その辺りはご想像にお任せ!
セフィロスが足技使ってるのはアレです、ACで華麗なる足技を披露してくれたのにキュンときたからですv
……しかしな、なんだろうこれ何かえろい気がするのは気のせいですか……こ、こんなつもりでは^O^;
まぁ後編が裏なのでしょうがないですね!というか私の本質が見え隠れしている気がw あれです、目隠しとか監禁とか大好きですHENTAIなんですすいまっせーん!
ネタの泉にていただいた『クラティ前提のセフィティ』を書かせていただきました!佐内様ありがとうございましたv
というかクラティ要素少なすぎてすいません!orz 目隠し&監禁ネタも裏の予定だったのにこちらにも入ってしまいました><
クラ+スコ×ティーダ←セフィ争奪戦というのもありましたがこちらもそのうち書かせていただきますね!
ではでは、最後まで読んでくださりありがとうございました!