女子会を始める!

「全員集まったな」
 ライトニングが部屋の中にいるメンバーをぐるりと見回す。そこにいるのはコスモス、カオスの女性陣、果てはシャントットやプリッシュまで。この異世界の女性メンバーが勢ぞろいしていた。
「私達まで呼んでよかったのですか?」
「わしは一応、性の区別はないのだがな」
「折角の女子会 皆で楽しまなきゃ、ね?」
 少しだけ居心地の悪そうなアルティミシアと暗闇の雲に、エアリスが柔和に微笑む。他のメンバーも頷く。今日は無礼講というやつだ。
「まあわたくしは女子、ではなく淑女、なのですけれど」
「固いこと言うなよおば……博士!」
「簡単なものしかできなかったけど……」
「すごい、ティファが作ったの?」
 女の子好きのジタンがいればさぞ喜ぶであろう光景。異世界に呼び出された女性達が一堂に会し、キャッキャウフフと花を飛ばしている。

「飲み物もまわったし……ライト!」
 静かに頷くと、いつの間にかリーダー役になっていたライトニングがグラスを掲げた。
「ではこれから、ティーダを愛でる女子会を始める!」
『かんぱーい!』

 全員がグラスを掲げ、ここにティーダを愛でる女子会なるものの幕が上がった。ことの始まりは何だったのか、もう皆忘れつつあったが……一番最初はそう、ティーダのことをユウナが語り始めたのが原因だった。 徐々に語りは熱を帯び、他のコスモスの女性陣も集まり始めたところでコスモスが。

『いっそ女子会をしてはどうですか?』

 この鶴の一声で今回の女子会が決定したのだ。ちなみにこの部屋……もとい空間はコスモス提供である。
 男子禁制の花園。手作りの菓子の甘い香りと、女性ばかりという華やかさは確かに女子会と呼ぶにふさわしいだろう。だが話す内容はというと。

「ティーダの魅力は何と言ってもまず! あの元気で明るいところですっ」

 早々に力説しているのはユウナ。正ヒロインという強みもあってかいつもより威勢がいい。
「元気で人懐っこくて、弟みたいよね」
「ふっ……私はお姉ちゃんと呼ばれたことがある」
「ライト、それこのサイト内の話だから……」
「おいメタな発言はよせ」
「お前が言い出したんじゃねーか」
「ここはコスモスの力を用いた特別な空間という設定だそうなので何を言っても大丈夫ですよ」
「アルティミシア、設定とか言っちゃダメ」

 エアリスが苦笑しながら嗜めるが、そういう設定なら仕方ないと言わんばかりに皆やる気満々だ。
「へっぽこ君はまあ弟というのも分かりますが、どちらかと言うと子犬のような感じではなくて?」
「そう言えばライト、13本編でも年下の男の子可愛がってたよなー」
「ほう、しょたこんというやつか」
「違う」

 あらぬ疑惑が持ち上がりつつも話題はティーダ本人の魅力から他のメンバーとの関係性に移る。
「でも普段は明るいけど、父親絡みだとむきになったり、考え込んだり……それと、10本編の結末も切ない感じなのに受け入れてる……そんな強いところも、好きだよ」
「ティナの言うとおりだぜ! 親子の絆ってのはいいモンだよなっ」
「この世界でも派手に親子喧嘩とやらをしておったな」
「一番関係が強いのはやっぱり10出身のジェクトとユウナだけど、この世界だとフリオニールとのコンビもいいよね」
「のばらの坊やとは一番絡みも多かったですからね」
「クラウドさんやセシルさんとも一緒に行動してて、兄弟みたいな関係も楽しそうです!」

 10本編にはワッカという兄貴分がいたためか、ユウナは二人のやり取りを思い出してくすりと笑う。こちらの世界ではティーダが周りを振り回してばかりなのだが、向こうでは弄られていることも多かった。
「ふふ、クラウドも兄弟はいなかったけど、ティーダの前だとクールなお兄さんて感じなんだよね」
「セシルも優しい兄という風もあるが……続編だと父親属性も持っているから侮れないな。ティーダも無意識に甘えることがあるのかもしれない」
「兄らしいという立ち位置もいいものですが……獅子などは同い年ということもありますし、性格も正反対で喧嘩することも多いですがバランスの取れた組み合わせです……8と10は共通点もいくつかありますからね」
「あの能天気な二十歳児さんや女たらしのお猿さんもへっぽこ君とはよく一緒に遊んでいらっしゃいますわね。元気が有り余っているようですからたまには実験に付き合っていただきたいものですわぁ」

 シャントットの横で幸せそうにクッキーを頬張っていたプリッシュも、ぺろりと指を舐めながら参戦する。体育会系同士、ティーダとは気が合うようで随分と気に入っているらしい。
「WOLだって最初はそりゃぼんやりしてたけど、今じゃ皆を纏めるリーダだしティーダだって頼りにしてるんだぜ!」
「WOLとは無印版だとテキストだけだったシーンがムービーになって、より一層印象深い場面になったわね」

 同意を得てちょっと嬉しそうなプリッシュの横でティナも声を上げる。この場にいる全員がティーダのことを好きで、余すところなく愛でたいのは一緒なのだ。
「オニオンもね、最近はよくティーダと一緒にでかけたりするんだよ。最初はちょっぴり邪険にしてたんだけどね……ふふ、今でも自分の方がしっかりしなきゃって思ってるみたいだけど」
「逆にティーダは、唯一お兄ちゃんぶれる相手だと思ってるかも」

 皆がつられて笑う。一人っ子のティーダは兄弟というものに少し憧れているらしく、年の離れた弟のようなオニオンをよく構っているのだ。
「012参戦組はあまり絡みなかったよね、ちょっともったいない、かな」
「そもそもカオス側というなかなかに美味しい設定なのに活躍は特になし……不憫な子ね」
「わ、わたしとジェクトさんとはちゃんと絡みました!」
「あ、でもヴァンなんかは公式クエストで出会ってるし……」
「コスモス側のティーダだったら、仲、良かったかも」
「まあ絡みないっつったら俺や博士なんて論外だしー」
「絡みの少ないキャラ同士は皆の想像に委ねられているわけだな。絡んでなくても何も問題はない」
「絡みがないといえばカオスの者共もだが、お主らはどう見ておる」

 珍しく自分から意見を言う暗闇の雲。ティーダのこともだが、彼女―彼かもしれない―は人間全体に対して随分と興味深く観察しているのだ。
「カオス側かぁ……最初に出たけど、一番関わるのはやっぱりジェクトで、他は皇帝かな?」
「あの金ぴかさん、嫌いですっ」
「ユウナがこんなにはっきり言うとは……」
「だってあの人12回目でも13回目でもストーリーモードで二人に酷いことばっかりするんですよ!」
「まあまあ落ち着けって。金ぴかもウボァーとかネタ方面では散々だしいいじゃねぇか」

 プリッシュに宥められてちょっと恥ずかしそうにするユウナに微笑みつつ、エアリスが飲み物のおかわりを渡した。
「カオスの人たちって基本的に敵だけど、実は優しい所があるとか世間知らずだとかいう設定がつけられやすいわよね」
「皇帝なんかマトモに悪役やってる分だいたいツッコミ役に回ったりな」
「ティーダがカオス側にいた時ってどんな感じだったの? アルティミシア、暗闇の雲……あ、ティナもいたことあるんだよね」
「そうですね……本編ではあまり絡んでいませんけど休憩時間や舞台裏では一緒に遊んでることもありました」
「え、舞台裏とかなんだよそんなことまで話していいのかよっ」

 珍しくプリッシュがツッコむがここはそういう空間なので問題はないのだ。ご都合主義とか言ってはいけない。
「ゴルベーザさんはいつも優しかったし……クジャとかもたまに遊んでくれたりしてたんだよ。アルティミシア、前は紅茶とクッキー、ありがとう。ふふ、魔女のお茶会ってあんな感じなのかしら」
「小僧はよくケフカと一緒にいたずらをしておったな」
「そ、そっちのティーダもすごく見てみたいですっ」

 食いつくユウナに微笑みつつも、すこし残念そうな顔をしているのはティファやエアリス。
「なーんだ、舞台裏のこととかも話していいんだったらコスモス側の話題だった時もっとしておけばよかったわね」
「でもコスモス側、ティーダとのお話 多いし。カオス側のお話、もっと聴きたいな」
「……7組なら英雄のことはよく知っているんじゃありませんか?」
「英雄はだめだ。これを書いているやつのお気に入りだから話が長くなる」
「発狂前と後のギャップにやられたらしいってオニオンが教えてくれたよ。確かに部下を気遣ったり、優しい所があるんだよね」
「それに加えて7と10の世界にはつながりがあるという非公式設定もありますから、余計に燃えたらしいですわね。わたくしとしても興味深いところではありますわ」
「ティーダなら、暗い過去を持つ彼でも変えてしまうかも、なんて思えちゃうよね」

 賑やかに続けられる会話。次第に菓子も少なくなって来た頃に、ライトニングはふとため息を吐く。横にいたユウナがそちらを見ると妙に険しい顔をしていて。
「なあ皆……これだけ盛り上がっておいてなんだがな」
「どうしたの?」

 すっと立ち上がると拳を握り、ライトニングは力強く叫んだ。

「私は野郎共にティーダを渡す気は一切ない!!!」
「おいいいいいいお前は何言ってんだいきなり!!」
「お前達だってそうだろうっ!」

 突然今までの語らいをひっくり返すようなことを言い出したライトニングにプリッシュも思わずつっこむが尚も彼女は言葉を続けた。
「いや、今までの語らいを否定するつもりはない。誰かと一緒にいるティーダを見るのもとてもいい……かわいい……癒される……だがしかし! 私のティーダは誰にも渡さん!」
「ちょ、ちょっとライト!」

 思わず立ち上がり声を上げたユウナに皆の視線が集まる。ライトニングと向き合うと、普段の控えめな性格とは裏腹に声を張って。
「ティーダはライトのじゃないです! 皆のティーダですっ! 本当は正ヒロインであるわたしのって言いたいところですけど!」

 後半はちょっとツッコミ所があるが、前半部分には他のメンバーも異論はないのかうんうんと頷く者もいる。
「ああそうだな……悪かったつい熱くなってしまった」
「まあ確かに、友達や弟感覚で仲がいいのは見ていて微笑ましいですけど、もしも邪な目であの子を見ている者が出てきたら……と思うとちょっと腹立たしいですね」
「その通りだアルティミシア、ティーダの貞操は私達が守る!」
「ライト、やる気満々 だね」
「じゃあいっそ『ティーダを愛でつつ影から守る会』とかにしちゃおうか?」
「さんせー!」

 更に盛り上がる女子達にお菓子の追加でも持っていってあげるべきかと、この空間を作り保っているコスモスはくすりと笑う。

「あれーコスモス何やってるんスか?」
「あらティーダ……あなたは本当に愛されていますね、ふふふ」
「?」

「うーん、じゃあ当番でも決めてみる?」
「ほう、いい考えだな……まずは……」

 かくして『愛でる』に『守る』が付け加えられた会は今後も定期的に行われることとなるのであった。

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■五万打企画リク■

・ティーダ総受け
13「これから、ティーダを愛でる会ver.女子(仮)の会議を始める」
・女性陣が集まってティーダを愛でたりcp論争をしたりしているイメージ。

 清水様、ありがとうございました!

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