その日、フリオニールは妙に切羽詰った様子でジタンの所にやってきた。
またティーダと喧嘩でもしたのかといつもの調子で相談に乗ったのだが。
「……え、つまりアレか。ティーダとヤりたいと」
「っ……ちょ、直接的に言えば……その……そうだ……」
僅かに頬を赤くしたフリオニールが誤魔化すように咳払いをする。
まさかこういう相談を受けるとは……まぁあるかもしれないとは思っていたが、それより何よりジタンにはツッコミたい所があった。
「っていうか、俺はとっくに済ませてんのかと思ってたんだけど?」
「いや……その……何となくそういう雰囲気というか、チャンスみたいなものはあったと思うんだ。ただ…………きっかけというか……どう切り出したらいいのか……」
うああ、と唸って頭をかくフリオニールが何と言うか、もどかしいが、微笑ましくもある。
手を出したくて仕方がないのにあと一歩踏み出せないのだろう。そして自己嫌悪も少し。
「フリオニール、最近エロい事ばっか考えてるんだろ?」
「…………」
「好きだーって気持ちは本当だけど、ヤる事ばかり考えちゃってる自分が嫌だったりティーダに嫌われると思ってる?」
「……ジタンは人の心が読めるのか……?」
「ま、予想だ予想」
金の毛並みの尻尾が、笑うのと同時にゆらゆらと揺れる。
普段一緒にいる時は普通なのに二人きりになるとどうも上手く行かないらしいというのは、傍から見ている方としてももどかしい。
一つアドバイスでもしてやるかと意気込むと、ジタンは改めてフリオニールと向き合った。
――――――
「おーッス! おかえりフリオ。どこ行ってたんスか?」
部屋に帰るとティーダがシャワーを浴びてきたのか髪を拭いている所だった。
恋人同士になる前から同室だったものの、しっとりとした肌や上気した頬には慣れない。
むしろ恋人になる前ならそこまで意識することは無かったと言うのに、最近はどうしようもないくらい目が行ってしまう。
触れたらどんな反応を返すのだろうか、キスしたらどんな顔をするのだろうか。ジタンの言うとおりそんな事ばかり考えてしまう自分が嫌になる。
決して体目当てというわけではないけれど、好きだという気持ちが大きくなるにつれ、欲望も比例していく。
それにティーダが風呂上りに上半身裸のまま抱きついてきたり、いつのまにかベッドに潜り込んでくるのも原因だった。
ジタンに話したら呆れを通り越して笑われてしまった。「それは誘われているんだ」と。
『多分な、その様子じゃティーダも待ってるぜ? お前が手ぇ出すの。だからまずは――』
「ちょっとジタンの所にな……と、俺もシャワー浴びてくるよ」
『落ち着くためにも、シャワー浴びて体綺麗にな』
――という具合に、取りあえずシャワールームに来たはいいが、落ち着くどころか徐々に心拍数が上がってくる。
(緊張しすぎだろ……)
自分で呆れてしまうくらいに心臓が早鐘を打っている。これでもし拒否された日には目も当てられないが、シャワーに来る前に見たティーダの上目遣いには何か感じるものがあった。
年下の仲間に言われた事を思い出しながら、とりあえずは体を洗い始めた。
――――――
一通り体を洗い終えると部屋へと戻る。既に夕食は済ませているのでティーダはベッドの上で本を開いていた。
「あ、フリオ遅いッスよー。いつもより長かったじゃん」
本を閉じたティーダの横に座ると後ろから抱き着いてきた。
ふわりとシャンプーの香りが漂い、その中に混ざるティーダの匂いにすら煽られる。
少しは落ち着いた心臓がまたスピードを上げてくる。一度深呼吸し言われた事を試してみようと思うが、深く息を吸い込んだらティーダの香りも混じって余計緊張してしまった。
『そんな雰囲気になりそうだったら、まず抱きしめて……キスだな』
ジタンは簡単に言ってくれたが、後ろから抱きしめられているこの状況で早速困ってしまった。
とりあえず首にまわされたティーダの腕をそっと掴む。するとぴく、と僅かに力が篭ったそれを外させベッドに乗って胡座をかく。
驚いた様子のティーダだったがすぐ嬉しそうに正面から抱きしめてくる。
「どーしたんスか? いつもは恥ずかしがってなかなかこっち向かないくせにさ」
「いや……ちょっと……」
こういう時に上手い言葉が言えない自分がもどかしい。そっと腕をまわして抱きしめるとティーダが胸に頭を摺り寄せた。
「……フリオの心臓、すっげードキドキしてるッスね」
「っ」
「……フリオニール」
下から上目遣いで見上げられて思わず喉が鳴る。心なしかティーダの顔も赤くて、熱を孕んだ瞳が徐々に近付いて。
「ってちょっと待ったーー!!」
「ぶっ」
突然の展開に頭がついていかなくて、思わずティーダの顔が近付いてくるのを手で止めてしまった。
(いやいやおかしい何かおかしいぞ俺がキスしてティーダの意思を確かめてからベッドに倒してリードしつついや初めてなんだからリードとか気負わなくていいってジタンが)
ティーダの色っぽい表情を見て軽くパニック状態になっていると顔を抑えたままのティーダがぷるぷると震えだした。
慌てて手を離すと顔を真っ赤にしたティーダが涙目で睨みつけて叫んだ。それはもう、外まで聞こえるんじゃないかというくらいの大声で。
「っ~~~~フリオの馬鹿野郎ーーーー!!!!」
「え、ちょ……ティーダっ?」
「ひ、ひとがっ……さんざん誘ってんの、に……手ぇ出さないしっ……い、今だって…………!!」
「な、泣くなティーダっ……!すまない、驚いただけなんだっ」
遂にはぼろぼろと涙を零し始めてしまったティーダを宥めるが、ふとティーダの言葉が引っかかる。
「あれは……誘ってた……のか……やっぱり」
「うっさいのばら! くっそ~バッツの嘘つき! 拒否られてんじゃん! そんなに俺とするの嫌かよっ!!」
「ティーダ! 取りあえず落ち着いてくれ……っていうかバッツってどういう事だ!」
最早何がなんだか分からない。一先ず話し合おうと、怒りながら自分を罵倒するティーダを宥めているうちに自分も落ち着いてくる。
暫らくしてようやくティーダも落ち着く。まだ不機嫌なままだが、少しずつこうなった経緯を話してくれた。
「恋人同士になってさ……オレすげー嬉しかったんスよ。なのにフリオはろくにキスもしてこないし手もつないでこないし」
「すいません……」
「だからバッツに相談したんスよ。どうしたらフリオがその……手出してくれるかって」
ほんのりと頬を染めたティーダに頭がぐらぐらする。彼もそういう気持ちを持っていてくれたというのは純粋に嬉しい。そう思ってくれていた彼のためにももっと早く行動するべきだったかと思えば少々情けなくもあるが。
「お、オレもフリオとしたいと思ってる、し……覚悟できてんだからなっ」
何度もそういう雰囲気作ったのに! と自棄気味に言われ、応えてやれなかったことが申し訳ない。
だからこちらも今までの事と、ジタンに相談したことを話した。
「……それで、どう切り出せばいいかわからなくて……すまなかった。さっきのも、ジタンにもらったアドバイスを参考にやってみようとしたら予想してた展開と違って驚いて……」
「フリオってアドリブに弱いタイプっすね……」
苦笑だが、ようやくティーダが笑ってくれたことに安堵する。互いに誰かからアドバイスを貰うあたり、似たもの同士なのかもしれない。
「で、フリオ。続きはしないんスか?」
「……はっきり言うなお前は」
「だって! こうでもしないと先に進まないッスよ!」
恥ずかしさもあるのだろうが、それよりも自分にもっと触れたいと思ってくれていることが嬉しい。
それでもまだ少しだけ、躊躇ってしまう。ティーダを想い淫らな妄想ばかりしている自分を嫌がらないだろうか。
「んあー! もうフリオはぁー! オレだってフリオの事とか……っえ、えろい事とか考えるっつーの! いいからキスぐらいしろよなっ!」
「ティー……っ!」
痺れを切らしたティーダが顔を寄せるが、勢いあまってがち、と歯がぶつかってしまった。
痛みで二人共涙目になりながら口元を押さえる。目があって、同時に笑った。
ティーダの肩に手を添えると緊張した面持ちで目を伏せる。改めて自分も緊張して、息を荒げないように気をつけながらそっと唇を重ねた。
「ん……っ」
小さくもれた声に心拍数を上げつつ、柔らかく啄ばむように唇を動かすとティーダもそれに応える。
「ッ……ティーダ……し、舌……いれる、ぞ」
「いちいち言わなくてもいいッス……っ」
怒ったティーダがぺろ、と唇を舐めてきたから、つられるように自分も舌をだした。
熱く濡れた舌先同士が触れ合って、驚いて引っ込んだそれを追いかけるように口の中に侵入する。
ぴちゃりと濡れた音がして官能を擽られる。テクニックも何もない動きだとは思うがティーダも負けじと舌を絡めてきて、離れた時にはお互い息も絶え絶えだった。
「はぁ……は……ティーダ……」
「ん……フリオ、ニール」
口の端に垂れた唾液を拭うティーダをベッドに押し倒す。柔らかいベッドに体が沈んで、スプリングが軋んだ。
「あまり上手くできないかもしれないが……い、痛かったら言ってくれ」
「だ、だから言わなくても……! んっ」
キスをして、寝間着代わりの服を捲りあげる。
『いーか? 初めてなんだから挿れてイカそうなんて考えんなよ? まずは愛撫で気持ちよくさせてやれよ』
何故ジタンはあんなに大人びているというか、知識があるのだろうかと思いながらもその言葉通り肌の上で手を滑らせた。
くすぐったいのか恥ずかしいのか、身を捩らせるティーダの様子を見ながら胸の突起へと触れると小さく声が上がる。
「んっ……ぁ……」
「ど、どうだ……?」
「~~~~ッ恥ずかしい事聞くなよな!」
「仕方ないだろ! は、初めてだし、ティーダにはちゃんと気持ちよくなって欲しい……」
尻すぼみになっていく言葉にティーダが黙り込んでしまった。怒らせたかと思ったが髪の隙間から覗く耳は赤くて、ぽそりと呟かれた言葉は自分を昂ぶらせるのに十分だった。
「……い、から……」
「え…………」
「ちゃんと……きっ……きもち、いい……から……」
途切れ途切れに伝えられる言葉に顔が熱くなって、嬉しくて、夢中で口付けた。
ただ唇を触れ合わせるだけでも心地よい高揚感を味わえるのに、舌を絡めるなんて堪らない。
技術がなくても、好きな人の、ティーダの口内を味わうだけで体に甘い痺れが走る。どうかティーダも同じであって欲しいと思いながら、胸への愛撫を再開する。
「ッ……ん……ん、んっ…………ふ、りおっ……」
恥ずかしそうに声を耐えるティーダが堪らなく色っぽくて、僅かに反応している突起を口に含むとひっと息を引きつらせた。
「ん、あッ……や……フリ、オッ……は、はずかし、って……っん!」
「ッ……てぃ、ティーダ……」
「んんっ」
ティーダの指がくしゃりと髪をかき混ぜる。掴まれて少し痛かったけれど構わず愛撫を続ける。
胸を弄るのとは反対の手で足の間へと手を伸ばすとティーダのそこは熱く硬くなり始めていて、確かに感じてくれているんだと何だか感動してしまった。
まずはティーダを気持ちよくすることが先決――ちゅ、と音をたてて胸から離れると足の間へ。ズボンと下着を取り去り、顔を近づけると吐息がかかったのかティーダの足がぴくりと強張った。
「ふっフリオっ!?」
「イかせられなかったら……すまん」
「ちょ……ま、まっ……ッ、んあ……!」
歯を立てないように気をつけながら半勃ちのそれを口に含む。取りあえず自分がする時に気持ちいい所を舌先で擽ってやるとびくびくと体が震えた。
足の指が快感に耐えるように丸まっていて、口の中のものも徐々に形を変えていく。
「ふり、お……あ、あッ……い……っ」
ティーダが嫌々と首を横に振るが、頭は未だにティーダに掴まれたまま、離されるどころか押し付けられている。
意外に細い腰が浮いて、甘い声が引っ切り無しにあがる。先端を舌で弄りながら二つの膨らみを手で転がすと、快感に耐えるように太腿に力がはいり、頭を挟まれる。
「や、あッ……だめ…………アっ……イ、く……いく、からぁッ……離――ッ!!」
「ッ……ん……!」
ぶるりとティーダが震え、口の中に熱いものが広がる。驚きで味も何も感じないまま飲み込んでしまった。
忙しなく上下する胸を落ち着けているティーダがそれに気付いて、頭を掴んでいた手を離した。
「フリオッ! ののの飲んだのかよ! 馬鹿変態!!」
「いや驚いてっ!? 痛っ! 痛い! わ、悪かった!」
真っ赤な顔でげしげしと蹴ってきて地味に痛い。加減はしているのだろうがそれでもスポーツ選手の脚だ。本気を出されたらと思うと一瞬ヒヤリとする。
今度から気をつけようなどと考えていると今度は逆にティーダが圧し掛かってきた。
「くっそ~、オレばっか恥ずかしいなんてフコーヘイっす! フリオにもこの気持ち味合わせてやるー!」
「お、落ち着けティーダ! それに俺の事はいいから……ッ!」
服を下ろされ既にティーダの痴態を見て勃起していたそれを素手で掴まれる。初めて感じる他人の手の感触に背筋がぞわりとした。
しかしそこからティーダが固まってしまった。弱点を握られたまま俯かれ、どうしようかと戸惑っていると何故かまた怒られる。
「ッ……い、いっこしか違わないくせに何で体格もこれもフリオのがおっきいんだよッ!」
「知るかー!? 痛い痛い力を入れるなっ」
理不尽な怒りに言い返しつつも自身を握るティーダの手に力が篭って痛い。
同じ男同士、流石に痛いと気付いたのか慌てて力を緩めてくれたがやる事は変えないらしくティーダの顔が近付いていく。
「ティーダ……無理をしなくても……」
「無理じゃないッス! のばらはオレのテクでひーひー言ってればいいんス! そんで明日から早漏って呼んでやるっ」
余程さっきの口淫が恥ずかしかったらしい。意気込んでそれを口に含もうとしたが、直前で止まりこちらを見た。
「……オレだけ、気持ちいいのも、なんか駄目ッスよ…………お、オレだって……フリオに、気持ち、よく……」
なってもらいたい、と殆ど聞こえない声で言うと舌を出してぺろりと先端を舐めた。
「ッ」
「ん……」
ちゅ、ちゅ、とキスして先端を中心に舌を這わせ始める。勢いはあるものの拙い愛撫に逆に煽られ、みっともなく息が上がりそうになる。
何とか堪えようと、顔を隠すように手のひらで覆う。目を閉じると下半身に伝わる甘い痺れが余計に強くなった気がした。
「ん、ん……はぁ……ど、ッスか……?」
「……聞くな……ッ」
「フリオだって聞いたくせに……っ」
「あ、ぁ……すまない……ッ……きもち、いいぞ……」
不満そうなティーダだったが、その言葉と、脈打ち雫を零す反応を見て少し嬉しそうに頬を染めた。
下手に声を出せば喘ぎ声が漏れてしまいそうで必死に耐える。生暖かい感触に包まれて、あぁ銜えられたのだと気付いた。
早漏などと呼ばれたくはないから必死で耐えているけれど、好奇心に負けて指の隙間からちらりと覗き見た。
「ッ……!」
自分の足の間で、勃起したものを舐め、銜える姿。視覚による刺激は予想以上に強く、より大きな快感を得て我慢していた熱があっけなく爆発する。
「……くッ……てぃ、ティーダッ……ぅあっ……」
「んっ! んん!? はッ……うわっ……」
射精を始めてしまった自身から慌ててティーダを押しやると、半分が口内に半分が顔に飛び散り、より酷い事になってしまった。
「げほっ……んん~……」
「す、すまな……ハァ……はぁ……早く出せ、苦いだろう」
「ん…………」
呼吸を整えながら顔についた粘液を拭ってやる。
口の中のものに顔をしかめていたティーダにそう言ったが、あろうことか喉が上下したのを見て全身が火をつけられたように熱くなる。
「てぃ、ティーダッ!!」
「う……へんな味……」
「馬鹿! そんなもの飲むな!」
「フリオだって飲んだだろ! オレの恥ずかしさ分かったッスか! これでおあいこッス!」
そう言うと、怒っていた表情を和らげて、少しだけ恥ずかしそうに笑った。
恥ずかしさを誤魔化すように押し倒して口付ける。
僅かに漏れる艶やかな吐息と呻きで、一度達したはずの自身が力を取り戻す。
ティーダもそれに気付いているのか、強く目を瞑って抱きついてきた。
「フリオ……」
少しの不安を含んだ声は、それでも先に進むというはっきりとした意思を伝えてきた。
「……痛かったら、すぐやめるからな?」
「嫌ッス」
「え」
「ここまで来たら痛くても最後までやるべきだろ!」
強気な態度だがやはり不安が見え隠れしている。
それでも最後まで、と言うのなら。そもそも自分も、そうしたいから。
「じゃあ、痛かったら言ってくれ……その、俺も努力はする」
「う……ん」
お互い赤くなる顔のまま、先に進むことを決める。
緊張で震える指先で後ろの窄まりに触れると硬くなるのが分かった。
「ふ、りお……先濡らせってば……」
「あ……すまないっ」
「も……緊張しすぎッスよ……」
呆れ顔のティーダに手を捕られ、指を口に含まれる。生暖かい舌が指の股を這いぞくぞくとした感覚が背中を走る。
ちゅぽ、と音を立てて指が引き抜かれ、透明な糸がティーダと自分を繋いだ。
濡れた指先でティーダの唇をなぞると首をすくめて顔をそらす。
「、ん……なんかエロいッス……」
そんなつもりはなかったのだが、はふ、と熱い吐息が指にふれて確かにいやらしいと思った。
ティーダの唾液で濡れた指で、改めて下へと手を伸ばす。
硬い入り口を解すように何度も撫で、指先をほんの少し埋めてみた。
「……っ」
「痛い、か?」
「ん、変な、感じ……ってかこんな、ちょっとで、痛いとか言ってたら……んっ」
「それはそうだが……」
強がるティーダの様子を見ながら奥へと指を進める。少しでも気が紛れればと萎えた自身を擦る。
「っん……ぅ……そ、そっちは、いいって……」
抵抗するように伸ばされた手を気にすることなく更に刺激すると、腰が跳ねて小さな悲鳴があがった。
それに煽られて思わず指を押し込んでしまうときつく締め付けてくる。
中で指を動かすとティーダの目に涙が滲んでようやく我に返る。
「す、すまないっ! 大丈夫か!?」
「っ……へいき、だって」
「ティーダ……」
「平気ったら平気なんス!!」
頑なな態度に苦笑しつつ、先ほどのように無理はしないようにと気を使う。
殊更丁寧に、滑りが少なくなれば新たに液体を継ぎ足して解していく。
やがて痛みも和らいできたのか、ティーダの吐息に苦痛とは別のものが混じり始める。
ティーダの様子を伺うと息を乱しながらもしっかりとこちらを向いていて、腕を伸ばして抱きつかれる。
「フリオ……も、いい……っす」
甘えるように頬に擦り寄られて顔が熱くなる。
本当にいいのかと問えば、きっとまた強がるのだろう。解したそこから指を離して、くちづけた。
「ティーダ……」
「ん……」
肌を重ねて伝わる互いの心音。限界まで滾った自身に手を添え、秘められた場所へと押し付ける。
「ッ……ん、ぐ……ぅ!」
「う、ぁ……てぃ、だッ……く……」
想像を超える強い締め付けに汗が滲む。しかし痛みならばきっとティーダの方が強いだろう。ぼろぼろと涙を零し耐える姿は見ていて辛い。
互いに痛みで動けないまま時が過ぎる。とにかく力が抜けるようにと、安心するよう体を撫でる。
少しずつ力の抜けてきたそこに安心するが、熱い粘膜に敏感な部分を捕らわれていることを自覚すると、痛みが快楽へと代わり、限界だったものはティーダの中へと白濁を吐き出してしまった。
「っう、あ……!」
「ッあ……フリ、オ……! や、ぁ……熱、い……」
体内に熱い飛沫を感じてティーダが身震いする。
熱を吐き出したにも拘らず力を失わない自身は、その滑りの助けを借りて奥へと入っていく。
全て収まったと気付いた時はお互い全身汗みずくだった。
「は、ぁ……ティ……ティーダ……すまない、先に……」
「……そーろー」
「う…………」
「……はは、嘘ッス、よ……んッ」
「くっ」
熱い内壁に締め付けられて声が漏れる。二人分の荒い息遣いが部屋に響いて官能を刺激される。
堪らず腰を動かすと背筋を這い上がる快感。
「ッ……は、ぁッ……! ティーダ……ッ」
「ぁ、ぐ……ん、んッ……フリ、オ……ッ!!」
苦しい程の快感。その誘惑に負けて快感を追っているとティーダが苦しげな声を上げる。
「ティーダ……ぁっ……すま」
「あ、やまる……の、……ぁ、あ……禁止……!」
いいから、と耳元で囁かれて甘い痺れが思考を侵していく。
腕と足が体に絡みついて引き寄せられた。そのままキスすれば互いの肌が密着して、心音が伝わってくる。
ゆっくりと律動を開始すればやはりまだ苦しそうな息。それでもいいからとティーダに求められて、自分もティーダを求めて動く。
卑猥な水音も苦しげな吐息も、全て自分を煽る媚薬でしかない。
「はぁッ……はあ……ぅッ……ティーダ!」
「ん……ッ! ん、んッ、ん……ふ、りおっ……」
ぐちゅぐちゅと卑猥な音が響いて、粘液が溢れる。
ぎゅうぎゅうと締め付けてくる内部は絶えず快感をもたらして、腰が止まらない。
再び先に欲望を弾けさせてしまったが、ティーダもそれどころではなくなってきたらしい。
時々あがる苦痛以外の声。その変化に戸惑っている顔にすら煽られてくちづける。
「んッ、……く……ん、ぁ……あッ……な、なん、か……」
「慣れてきた……か?」
「そ、かも……ッん、あ……ちょ……ちょっと待って……あ……っ!」
ティーダの体がびく、と跳ねて熱い吐息が耳をくすぐる。
もう一度腰を動かすと上ずった声を上げて四肢に力がこもった。
「ティーダ……き、気持ちよくなってきたのかっ?」
「ッ~~聞くなつってんだろ馬鹿のばら!」
「いだッ」
何度やっても自分は懲りないらしい。と言うよりは、まともに思考が働かなくなっているせいかもしれない。
快感を得られてきたのなら、と腰を動かすと怒って暴れていた動きがぴたりと止まる。
眉をひそめ、唇を噛んで耐えようとする表情に煽られて、理性も何もかもかなぐり捨てて衝動のままに突き上げる。
もっと優しくしたいのに、若い体は欲望のままに快楽を追い求めて動く。
震えながら蜜を零し始めているティーダのものを手で擦ると、普段のティーダの声からは考えられないくらい高い音の悲鳴。
「ふりっお……! あ、あッあ……! フリオ、ニ、ル……ひッ!」
「ティーダ……ッはぁ……ティー、ダ……好きだ……好きだッ……」
「んんっ……ア……オレ、もぉッ……、あっあっ……!」
飢えた獣のようにがっついて、息を乱しながら舌を絡める。痛みのせいか快感のせいか、ぼろぼろと零れる涙にすら欲情した。
体も思考もぐちゃぐちゃで、相手を求めることしか考えられなくなって。
「ふりお…………ッあ、んん――――!!」
「……ッう……くぅ……!」
熱い飛沫が腹へとかかるのを感じる。きつい締め付けに、自分もまた熱を解放した。
全力疾走した後のようにぜぇぜぇと酸素を求めて喘ぐ。何とか息を整えながら顔をあげると、絶頂の余韻でとろんとした顔のティーダ。
思わずまた反応しそうになる下半身を理性で押さえつつ、汗で張り付いた髪をかきあげてやる。
「ん……はぁ……はぁ……ッ……のばらぁ……」
「……こんな時にその名前で呼ばないでくれ……」
「も、冗談っすよ……拗ねんなよーフリオ」
けらけら笑って頬にキスするティーダにお返しする。くすぐったそうに身を捩る彼も手を伸ばして体を擽ってくる。
事後のしっとりした雰囲気など皆無に等しいが、自分達らしくていいと思う。
ひとしきり笑いあうと抱き合って互いの体温を感じあう。肌を合わせれば、最初のような緊張ではなく、ほっとした気持ちになれた。
「えと……き、気持ちよかった、ッス…………でもフリオいきすぎ!」
「うっ……それについてはすまない……」
反省すべき点は色々とあるが、気持ちいいと感じてくれたのなら本当によかった。
とはいえ、達した回数は自分の方が多い。
イかせようかと尋ねて、真っ赤になったティーダに自慢の脚で蹴られたのは言うまでも無い。
「ところで、バッツに相談して……何て言われてたんだ?」
「んー、まぁ実際やってた風呂上りに抱きつけとかちゅーを迫ってみろとか、どーしても駄目ならコレ飲ませて襲えって」
ぽん。
「………………」←媚薬
「なんて物渡してるんだお前はーーー!!??」
「ジターン! オレなんかすげー狙撃されてるんですけどっ!?」
「……あー……どんまい」
――――――
あとがき。
ながか……った……orz
自分でもびっくりの長さです。いや、読んだらそんなに大した長さではないかもしれませんが一番難航しました。
ネタの泉にて、匿名の方二名にいただいた『えっちなの、二人ともいっぱいいっぱいな感じ』と『210のラブラブエッチ』を書かせていただきました。ありがとうございました!
やはり210は初々しくてらぶらぶでいっぱいいっぱいなのがいいよね!と思いつつ何故こんなに時間がかかってしまったのか……!
お待たせして(もうここ見ていらっしゃらないかもしれませんが;)申し訳ありませんでしたー!
いっぱいいっぱいというよりは何だかしつこいくらいに手間取らせているというかねちっこいというか、お前ら早く先進めYO!と言われそうな鈍足っぷりです。
文章力のなさを痛感します……もっと精進できるよう頑張ります。
最後まで読んでくださりありがとうございました!