「っ、ぁ……」
僅かに漏れた自分の声で意識が浮上した。
と、同時に、体を這う生暖かい感触と、それに合わせて漏れる自分の声に気づく。
「……っ、んん……ッ」
びく、と体が跳ねる。身じろいだら手を縛られているのがわかった。更に目隠しをされているらしく、状況を確認できないけれど何をされているのかは理解できた。
「や……ッ……ぁ」
柔らかな感触と軋む音でベッドの上にいるのだということもわかった。そして今自分に触れている手は、よく知った感触だった。
「…………くら……ど……?」
「起きたのか、ティーダ」
体を這っていた感触が止まり、ほ、と息をついた。目隠しも束縛もされたことはないし、いつの間にこんな状況になったのかも分からないが、いつも通りの優しい声だったから少しだけ安堵した。
「ティーダが起きました、セフィロス」
「…………ッ!?」
「あぁ、体を起させろ、クラウド」
「はい」
腹に響くような低い声は、クラウドの宿敵の、
「んぐっ」
「嘗めて濡らせ」
クラウドの手に抱き起こされ、座る格好になると指を口内に突っ込まれる。少し伸ばせば喉まで簡単に届きそうな長い指がぐちゃぐちゃと口内をかき回す。
「んっ、ん、んぐ……ッ」
頭が、ついていかない。なんで、どうして。
せめてもの抵抗に指を噛み千切ってやろうかと思ったのに、下肢を刺激されてそれは叶わなかった。
「はッ……んん……!」
「ティーダ、セフィロスに歯を立てたらだめだろう。ほら、もっと足を開け……セフィロスに見えないだろう?」
「っ……は、ぁ……や、……いや、だッ……クラウドっ! いやだッ……くらうど……なん、でッ」
ずるりと指が口内から引き抜かれて、ようやく意味のある言葉を口にする。けれど答えが返るよりも早く後孔をぬるりとした感触が撫でて。
「ふ……すっかり出来上がっているな? 随分と仕込んだのだな、クラウド」
「俺が慣らしましょうか」
「いや……お前はしっかり足を開かせていろ」
「はい」
膝裏に手を入れられて足を開かされる。後孔に触れる手が、今目の前にいるであろう人があの男だと思うと。
「ッ……やめろ! 触んな……っ……」
後ろ手で縛られたままもがいてみるが、足を抱えられた状態では当然意味が無かった。
「っ……!」
つぷ、と侵入してきた指は口内の時のように荒々しくはなく、むしろ優しい動きで内壁を撫でた。
「……、ぅ……」
「……クク……声を上げてもいいんだぞ?」
「、だれが……ッ……ぁ、あっ!!」
ぐっ、と一番感じるところを刺激されて、苦しいくらいの快感にあっけなく熱を解放する。
くつくつと嘲るような笑いに羞恥と屈辱とが混じり合って涙が滲んだ。
腹に散った白濁を指で掬うと、再び後孔に侵入し塗りこめるように指を動かされる。
「ん、……ッなにが、したい、ん……だよっ……あんた……ッ」
その問いに答えはなく、指が感じる場所を掠めるたびにびくつく体がたまらなく嫌だった。
せめて、と声だけはなるべく出さないようにするが、鼻にかかった上擦った吐息までは隠し切れない。
「ティーダ、苦しいだろう。ちゃんと声を出したほうがいい」
「っ……くらうど……な、ぁ……クラ、ウド……っ! やめ、て……くれよ……っ」
身をよじってクラウドに哀願する。正気に戻ってくれ、と。けれどクラウドからの返事は無い。暗闇に閉ざされたままの眼ではどんな顔をしているか確かめることもできない。
「無駄だ。それはもはや私の操り人形……」
「っるさい! アンタなんかに……ッくらうど、が……負けるわけ、ない……!!」
「……クク、そうか……ならば証を見せてやろう」
後ろを弄っていた指が抜かれ、ほっと息をついたのもつかの間。ぎしりとベッドが揺れて、男は嘲りを含みながら言った。
「クラウド、それを私に跨らせろ。……あぁ、ちゃんと挿入してやるんだぞ?」
「はい、セフィロス」
「っ!? くら、」
「ほらティーダ、しっかり膝立ちしろ」
足を開いた状態でベッドに下ろされる。おそらく下にセフィロスの足があるのだろうが視界を奪われ、腕も縛られた自分に大した抵抗などできるわけもない。
「やっ……いやだ……嫌だッ……クラウド! や、」
「ティーダ……」
キスを、された。
少し後ろを向かされて、唇が触れた。驚きで開いた唇の隙間から舌が侵入してきて、絡められる。
「んっ、んん……っ……ん、ふ、あ……」
大好きな、大好きなクラウドの愛撫に慣れてしまった体は、それをすんなりと受け入れてしまう。
ゆっくりと腰を下ろされても、クラウドから与えられる快楽に抵抗できなくて。
「ッ、あ、ああぁ、ぁ――!!」
後孔を押し広げながら侵入してくる熱隗に情けなく悲鳴を上げてしまう。慣らしたとは言え、指とは比べ物にならないほど大きなそれは苦痛しか生み出さない。
「ッは……! あ、……はぁ……はぁ……」
「全部入ったぞ、いい子だ、ティーダ」
クラウドがこめかみにキスしてくれるのも、いつもは嬉しいはずなのに。
「クラウド、縛っているから動けないんだろう……手伝ってやれ」
「あぁ、そうですね。……ティーダ、大丈夫だ。すぐに気持ちよくなる」
クラウド以外のモノを受け入れてしまったのが嫌で、悔しくて、嫌悪感でいっぱいになる。
それでも受け入れることに慣れてしまった体が、今はこの上なく恨めしい。
「最初の問いに答えていなかったな」
「……え……」
「私の目的は変わらない……クラウドに絶望を与えること……」
「…………っ……」
「ただ、もう一つ理由ができた…………太陽が堕ちる様をこの眼で見たい、とな」
ぐ、と腰を掴まれて体を持ち上げられたときは、もう手遅れだった。
「ッ――!!」
「ティーダも自分で腰を動かしたほうが気持ちよくなれるぞ……」
耳を甘く食みながらクラウドが囁く。
やだ、いやだ、こんなの……っ
「ぁ、あッ……や、……いや、ぁっ……ぅあ……! くら、うど……っ……おねが……っ、……!!」
クラウドに体を揺さぶられ、最初はゆっくりと、けれどだんだんと速くなる動きに、慣れた体は苦痛を避け快楽を得られるよう自然と動く。
「あっ、や……だッ……いや、だ…………ひッ……あ、あッ」
「……どんな気分なんだ」
「ッあ、あ、やっ……ッんん!! ん、あ……」
「愛する男の目の前で、愛する男の手で、他の男の上に跨らされ揺さぶられるのは、どんな気分だ……?」
頬に手が触れて、間近に男の吐息を感じた。
「……っ……あ、あッ……あああッ――――!!」
その直後、ずんっ、と下から強く突き上げられて、体を震わせながら絶頂する。
それでもクラウドは体を揺さぶるのを止めてくれなくて、男の欲望が全て注ぎ込まれた頃ようやく抜いてもらえた。
どろどろと溢れるそれに嫌悪感を持つ暇もなく、今度は男の大きな手に引かれベッドにうつ伏せにさせられる。
腰だけを高く上げる格好になり、何をされるのか、何をするつもりなのか予想がついたがもう抵抗できる力も思考も残っていなかった。
「さあ……『クラウド』。次は、お前の番だ……」
――――――
「っ…………?」
ぼんやりとした思考。僅かに揺れる視界と、誰かのか細い声。
「ふあ、あッ!!」
「ッ!」
その声に完全に意識が覚醒する。と同時に、強い快楽を感じて小さくうめいた。
「ククク……ようやくお目覚めか」
「セフィ……ロス……!?……ッ……」
「あ……あっ……」
わけが分からなかった。自分の目の前には宿敵である男がいて、そいつの見ている前で自分は恋人であるティーダを、
「ひ、ぅ…………ら、……ど……っあ」
「くッ……!? からだ、が……」
「諦めろ。お前は最早ただの人形だ」
快楽は確かに感じているのに、感覚は確かにあるのに、体の動きを自分で制御できない。
後ろ手で拘束され、目隠しをされているティーダは小さく喘ぎながら揺さぶられているだけだ。そして自分はそんなティーダを後ろから犯している。
「何を……っ……した……セフィロス!」
「何を……? それを壊したのはお前だろう?」
知らない、分からない、覚えていない。俺は何をしていた? 俺は、
「それを眠らせ、忠実に私の元へ連れてきただろう?」
「……しら、ない」
「私の上にそれを跨らせ、自分の手で揺さぶり犯しただろう」
「……ちが、う」
「嫌がるそれの哀願も聞かず犯し続けたのは誰だ……?」
「ち、が」
「何も間違ってなどいない。それは全てお前のしたこと
――あぁ、教えてくれ、愛する太陽を自ら壊したのは、どんな気分だ……? ク、クククク」
「ぁ……ああッ……あ……あ」
「ッ――――!!」
耐え切れず弾けた。隙間からどろどろと溢れるそれは、どれだけ長い間ティーダを苛んでいたかという証。
「……れは……おれ、は……っ」
「まだだ……」
体の動きはいつの間にか止まっていたが、やはり自由にはならなかった。
ティーダの体をセフィロスが引き寄せ、まるで恋人のように、愛おしそうに抱きしめた。
「まだ終わっていない……クラウド……更なる絶望をお前に、そしてこの太陽に贈ろう」
「っやめ」
―さあ、闇の底へ堕ちよう―
――――――
あとがき。
すみません、超好き勝手に書きました!!楽しかった!!
敬語クラウドさんは正直書いててかゆかったのですが(笑
ひたすらエローリ。書きたいものを書いた結果がこれだよ!!
なんというか、見方によってはセフィ→クラっぽくもあるしセフィ→ティでもあったりしますかね^^;
その辺の解釈は皆様にお任せしたいところです!
最後まで読んで下さりありがとうございましたーvv
しかしちょうどFF10の発売九周年の日だというのに何を書いているんだ私はww