喧嘩両成敗!

 喧嘩の原因というのは、いつも些細なものである。
 ほんの小さなことがきっかけとなり、いつしか話題が変わり普段の不満をぶつけ合うものになることもある。
 今現在、スコールとクラウドが正にそんな状況であった。

「大体なんださっきの戦闘の避け方は。それでも傭兵か?」
「あんたこそ自称元ソルジャーにしては戦い方に迷いがあるんじゃないのか」
「っ~~二人とも喧嘩やめるッスよ!」
「「お前(ティーダ)は黙っていろ!」」
「うっ……」

 怒鳴られてしゅんと頭を下げる姿は叱られた子犬のようで二人とも罪悪感を感じるが、今は目の前の相手に対する不満の方が勝っていた。
 怒鳴られると弱いティーダはしょぼくれたままどうやって二人を止めようかとあれこれ考えを廻らせていたが、近くにやってきた救世主に喜びの声を上げる。

「セシル! フリオ!」
「あの二人はまた喧嘩かい? やれやれ、困ったねティーダ」
「一度お互いに抱えてる不満はぶつけ合ったほうがすっきりするかもしれんが、あの調子だと尽きそうにないな」
 苦笑するフリオニールがティーダの頭をくしゃくしゃと撫でる。いつもなら子ども扱いするなと怒る所だが、少し元気のないティーダにはそれが心地よいようでされるがままだ。
「ウマがあわない……ってやつッスかね?」
「それもあるかもしれないけど……根本的に対立しちゃう原因があるみたいだね。ライバル、みたいなね」
「そっか、お互い兵士っぽいし強いし美形だしー……って言っててむかついてきたッス」
 不満そうに口を尖らせるティーダにくすくすと笑うセシルも、安心させるように頭に手を置いた。
「そういうのともちょっと違うんだけど……大丈夫、ティーダが気負わなくてもそのうち落ち着くから。ね」
 疑問符を浮かべるティーダを残し、セシルは未だに言い合いを続ける二人に近づいていく。ティーダからは見えないが、この時のセシルはとても、怖いくらい優しい笑顔だったという。
「二人とも、そろそろ日も暮れてきたし、野営の準備を始めたいと思うんだけど……………………いいかな?」
「あ、あぁ……」
「了解した……」
 有無を言わさぬ迫力……否、無言の圧力とでも言うべきか。セシルの笑顔に気圧され、二人とも一先ずは矛先を収めた。

――――――

「うーー…………」
 夜、テントの中でティーダは唸る。彼はすっかり失念していたのだ。今日のテントのメンバーを。
「よりによってあの二人も一緒……困ったッス~」
 昼間の喧嘩っぷりを思い出し、気が重くなる。ティーダ自身、喧嘩するのは構わないと思っている。それでもそれが延々と続くのは嫌なのだ。
 たとえ喧嘩はしていなくとも、険悪な雰囲気の中過ごすというのは、誰だって居心地が悪いものだろう。
 こういう雰囲気の時、二人はあまり相手をしてくれない。ティーダは何よりそれを嫌う。自分がどこにもいないような、空気のような存在になってしまうことを嫌う。
「――あ、スコール」
「……入るぞ」
 入浴をすませてきたスコールが隣に座る。クラウドは食事の片付けをしていてまだ帰ってこない。
「……悪かったな」
「え?」
「その、昼間……怒鳴ったりして」
「ああ、いいっすよそんなの」
 ひらひらと手を振って笑うティーダに、スコールも少しだけ笑みを返した。常ならティーダが今日あったことをぺらぺらと喋り、それにスコールが相槌を打つのだが、今日は随分と静かで。

「なあスコール」
「なんだ」
 寝転がり、テントの明かりを見つめながらティーダが問う。何故クラウドとよく喧嘩するのかと。
「クラウドのこと嫌いなんスか?」
「嫌いではない……ただ……敵、というか、ライバルというか」
「あ、セシルも言ってたなそれ。やっぱ共通点があるから?」
「共通点……まぁ、そうだな」
 何故かティーダの方を見ながら頷いたスコール。ティーダが首をかしげていると、ばさりとテントの布が開かれた。
「クラウド」
「概ねスコールの言ったとおり、だな。俺たちはいつか決着をつけなければいけない」
「決闘でもするんスか?」
 心配そうに見上げるティーダの頭をなで、クラウドは優しげに眼を細める。それを、スコールが睨むように見る。
「お前が心配するようなことはしない……なるべく早く決着を付けたい所だが」
「そうやって、兄貴風吹かせて、保護者面して、当たり前に傍にいるところが気に食わないと言ってるんだ」
「え? おわっ」
 唐突に、不機嫌そうな声を出したかと思えばクラウドから奪うようにティーダを引き寄せる。今度はクラウドが睨む番だった。
「ティーダ、明日の散策は俺と一緒だったな」
「あ、うん、そーっすね! よろしく頼むッスよ! ジタンも一緒だし、年が近い同士頑張るッス!」
 滅多に見せない微笑を浮かべ、ティーダの手を握るスコールに今度はクラウドが口を開く。
「……俺は、年が同じだからという理由で、そうやって他と違う距離感を作るところが気に食わない」
「…………」
「…………」
「えー……っと……」

 静かに火花を散らす二人の間で、何が起こっているのかいまいち理解できずにいるティーダが視線を右へ左へと動かす。
 しかし、今ここで自分が出来ることは、と必死にない知恵を総動員させて考える。が、いつもみたいに怒られるのがオチだ、と、心のままに言葉を出した。
「あのさ、ホントは二人が喧嘩してるのとか嫌なんだけどさ、喧嘩するなら思いっきりしろよ! んで、終わったら仲直りするッス!」
「ティーダ……」
 な! と二人の手を片手ずつ握って笑うティーダに、二人もつられるように笑う。惚れた弱みか、結局ティーダにはかなわない。
「そうだな……できるだけ普段は私情を挟まないように気をつける」
「決着はいずれ付けるつもりだがな」
「おう!」
 二人もティーダの手を握り返す。お互い視線で牽制し合っているが、手を握られたティーダは満足そうだ。
「仮に負けたとしても、そのまま黙って譲る気はないがな」
「最初から負けを想定するようなやつに負けはしない」
「…………」
「…………」
「あーもうっ!」

 すぐに牽制しあう二人にティーダはため息をつく。自分を放ってにらみ合う二人に、ぼそりと呟いた。
「いつまでもそんなだと……嫌いになるっス」
「揚げ足をとってすまなかったクラウド」
「俺の方こそ大人気なくてすまないスコール」
「早っ」
 即仲直りした二人を見て、何故かはわからないがこの台詞は有効のようだ、とティーダはにやりとする。
「うっし、仲直りしたし、一緒に寝るッスよー」
 一瞬固まった二人を置いて、その二人の間に寝転ぶ。
 両方の手をつないだままにへらと笑うティーダに、二人はやっぱり敵わないのであった。

――――――

あとがき。
 お久しぶりの更新です。久しぶりなので文章が前と違う感じになっているかもしれませんが……
 こちらネタの泉でいただいた『クラティ&スコティ(?)で喧嘩したクラウドとスコールを仲直りさせようとするティーダ』というのを元に書きました。
 匿名の方、ありがとうございました!もううちのサイトには来ていらっしゃらないかもしれませんけれど……(´・ω・`)
 クラティ&スコティというよりはクラ→ティ←スコになってしまいましたが、どうだったでしょうか。
 いつも通りの私らしく、甘々でふわっとした感じに(?)仕上げました
 果たしてこれから先決着がつくのか謎ではありますがw
 最後まで読んでくださりありがとうございました!!

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