【完結済】明けの空へ(ジェクティ)

【完結済】明けの空へ(ジェクティ)

終:再会

薔薇色の空が、次第に青へと変わっていく中で、家までの道のりをゆっくりと歩いて帰る。 隣を歩く存在そのものが幸福そのものであるように思えて、それを逃がさないようにジェクトは手を握る力を少しだけ強める。 すると、弱く握り返してくれるのがたまらな...
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十:言葉

「おれ……っぃ……ちどもッ……自分が、『ティーダ』だって、思えたこと……ないよ……」 途切れ途切れに、涙を堪えながら告白する少年は、夜の闇に飲み込まれてしまいそうなほどに頼りない存在だった。 ――そうではないかと、確かにジェクトも思ったこと...
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九:矛盾

初めてその真紅を目にした時は、ただ、怖かった。 心臓が縮み上がるような、息が詰まるような感覚。 こわくて、でも。 嫌では、なかった。―――――― ちゃぷんとお湯の跳ねる音がする。今聞こえるのはそれと、外から聞こえる鳥の鳴き声だけだ。 湯船に...
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八:乖離

あれから、ジェクトが拍子抜けする程ティーダはあっさりと機嫌を直した。 けれど、その代わりのようにジェクトはどこか壁を感じるようになっていた。 目の前にいるのに、態度はいつもと変わらないのに、ガラス一枚隔てたような微妙な距離感。 一度気付いて...
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七:不安

カーテンの隙間から差し込む朝日に覚醒を促され、二日酔いの頭痛に魘されながらジェクトは目覚めた。 そこまで深酒したつもりもないのだが――そう思った所で風呂場での出来事を思い出し、頭痛とは別の意味で頭を抱えたくなった。 共に風呂に入っている時、...
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六:変化【R18】

「おやじ! 早く起きろってば! 今日は朝から練習って言ってたじゃん!」 ぎゃんぎゃんと騒ぐ声に急かされてジェクトはぼんやりと目を開ける。 最近ではティーダもジェクトも生活に慣れたとあって、アーロンも自分の家に帰ることも多く、ほぼ親子二人での...
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五:日常

海の水は冷たいのに、体の奥底から熱が湧き上がってくる。 少し離れたところでボールを持ったままこちらを睨む目に昂る心を抑えられない。 パワーでは敵わないと分かっているのか、素早く身を翻してすり抜けようとするのを難なく止めると、そこから攻撃に転...
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四:呼声

「あ、豚肉が安い。今日のメインこれでいい?」「おぅ」 カートを押しながらティーダについて歩く。あれやこれやと商品を放り込むティーダを見ながら、ジェクトは気付かぬうちに笑みを零した。 ティーダが見つかってから一週間が経った。「だ、だって本当に...
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三:存在

「さて、少しは落ち着いたかな?」「あ、はい! あの、ありがとうございます」 湯気のたつカップを受け取りながら少年が礼を言うと、ブラスカは柔和な笑顔を向けた。「はは、そんなに畏まらなくてもいいよ。まあ起きた時にこんな強面のおじさん二人に囲まれ...
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二:遭遇

あの時、パチンと叩いた手の感触は、今でもまだ思い出せるのに。―――――― 最初こそ困惑し驚いたが、人間とは逞しいもので、しばらく暮らしてみればあっという間に新しい環境に適応していった。 ここは異界――魂の行き着く場所。 スピラではグアドサラ...