蒼天編

【長編】答えはいつか、旅の果てで。

34.次へ旅立つその前に

雪が降る中、そっと慰霊碑の前にニメーヤリリーの花と、小さく可憐なローズマリーの花を添える。草原を駆けるような爽やかな香りが鼻孔を掠めた。「しばらく帰ってこられなさそうだから、挨拶にきたよ」 そう言いながら、ハルドメルは慰霊碑の隣に腰を下ろし...
【長編】答えはいつか、旅の果てで。

33.幕間:懐かしき地、新しき力

「イシュガルドへ? 俺達が?」「はいでっす! 南ザナラーンに行かれたアルフィノ様達が、蛮神召喚の前にクリスタルを回収されまっした。イシュガルドから流れたものらしくて、サンクレッドさんを代表として返還に行くのでっすが……」「その護衛をってこと...
【長編】答えはいつか、旅の果てで。

32.希望が示す先は

今でも、その温かさを覚えている。 最初はその戦い慣れた風体と鋭い目付きから、アラミゴ難民を追い払うために雇われた冒険者なのだと思った。「あのー、すみません」「お前、冒険者か?」 隊長のメッフリッドに声をかけたその人は、第一印象とは裏腹な、穏...
【長編】答えはいつか、旅の果てで。

31.積み重ねられた旅路

小さなコボルド族、ガ・ブの嘆きが生じさせた、不完全なタイタン。被害を出さないためにそれを討伐して戻ると、アルフィノは心底安心した表情でハルドメルを迎えた。「あぁ、ハル……! 無事に戻ってくれたか……」「うん、もう大丈夫だよ」「ハル! よかっ...
【長編】答えはいつか、旅の果てで。

30.二人分の鼓動

邪竜の影が消え、本当の意味でイシュガルドの変革、そして竜と人との交流が始まってまだ数日。政治的な事では役に立たないだろうとは言え、何かしら手伝える雑用でもありはしないかと、ドラヴァニア雲海から戻った後ハルドメルは皆に訊ねて回った。しかしなが...
【長編】答えはいつか、旅の果てで。

29.差し伸べる手

イシュガルドがエオルゼア同盟軍への復帰を宣言した日と同じように、この日もまた空はよく晴れ渡っていた。 押し進められる変革に異を唱えた者達の声は、まだ記憶に新しい。だが四国合同演習でイシュガルドが勝利したことにより、貴族も平民も関係なく手を取...
【長編】答えはいつか、旅の果てで。

28.前へ、ただ前へ

立ち止まっている暇などない。悲しくても、苦しくても、時間は止まってはくれない。 できることがあるならば、やる。今までも、今も、これからも。「以前の旅を思い出して、少し感傷的な気分になってしまうよ」 聖竜の眷属たるヴィゾーヴニルとイシュガルド...
【長編】答えはいつか、旅の果てで。

27.語られない心

千年続いた戦争が終わり、長く閉ざされていたイシュガルドという国が、エオルゼア軍事同盟へと戻る式典が行われている。 クルザスは雪が多く降り、どんよりとした寒空の印象が強いのに、その日の空は皮肉なほどに蒼く澄み渡っていた。 さく、さく。 雪を踏...
【長編】答えはいつか、旅の果てで。

26.その剣は誰が為に

後に彼女が竜詩戦争の話をする時、そこから先の話は、それまでに比べて随分と、曖昧になる。――忘れたわけでは、決してない。ただ――彼女はあまり多くを語りたがらなかった。「多少は、光の加護が戻ってきているようだが……蛮神を倒せたとて、加護を失って...
【長編】答えはいつか、旅の果てで。

25.世界で一番美しい

エスティニアンの手によって残る眼を抉り取られた邪竜ニーズヘッグは、雲海へと消えていった。――終わったのだ、千年続いた永きに渡る戦争は。その立役者である、ヒトには過ぎた力を持つ二人はしかし、喜びも安堵も感じていない。「浮かない顔だな相棒。嫌疑...