雪の家編

【長編】答えはいつか、旅の果てで。

20.幕間:香りが呼び起こすもの

「オルシュファン、ただいま参りました」「入りなさい」「失礼します」 フォルタン伯爵――父の私室に入るのはいつぶりだろうかと、ふと考えた。オルシュファンがここへ来るのはいつも決まって大事な時だ。この家の、フォルタン家の従騎士に任命された日。親...
【長編】答えはいつか、旅の果てで。

19.一番星の輝き

その日のオルシュファンは、少し様子が変だった。 隊長が変わってるのはいつものことですよ、なんて、兵士達は冗談めかして言っていたけれど。どことなく、憂鬱そうな、ぼんやりとする瞬間があるようにハルドメルは感じていた。「シュファン、具合でも悪い?...
【長編】答えはいつか、旅の果てで。

18.甘いものは好きですか?

「お前は放っておくとすぐあれやこれややりはじめるからな! いいかお前達、絶対ハルに手伝わせるんじゃないぞ! 特に肉体を激しく躍動させるような戦闘行為はな!」 そんなオルシュファンの指示の元、キャンプ・ドラゴンヘッドに来てから何かと皆の手助け...
【長編】答えはいつか、旅の果てで。

17.忘れ得ぬ傷痕

「負けても二日酔いとか言わないでね!」「何を! お前こそ雪には慣れたのだろうな !?」 誰の目から見ても浮かれている二人は、いそいそと装備を調えていた。周りでは今度こそハルドメルが勝つに決まっている! いや隊長だ! と賭けの話をしている者や...
【長編】答えはいつか、旅の果てで。

16.夜明けの海の夢

少し、大げさなくらいが丁度いい。蔑まれても、呆れられても、笑われても。それで上手く回るのなら。――けれど。 あまりに。そう、あまりにも素直に受け、朗らかに笑うものだから。 ハルドメル達がキャンプ・ドラゴンヘッドにやってきて二日目。あの後はオ...
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15.一時の平和を

「おはよう諸君! よく眠れたか? 今日も一日民と友を守るイイ騎士としてその肉体を鍛え、雪原に汗を煌めかせるのだ! そのためにはまず! 食事はしっかり摂るのだぞ!」「あはは、朝から元気だね」「当然だ、今日からお前がここで共に暮らすのだからなっ...