紅蓮編

【長編】答えはいつか、旅の果てで。

39.幕間:いたみを知る者

「悪いな、まだ向こうに着いて間もなかったんだろう?」「いえ……人手不足なら……」 しょうがないです、と尻すぼみになっていく黒髪のララフェル――ククルタに、アレンヴァルド達も申し訳ない気持ちになる。 巴術士として、カーバンクルの特性を生かして...
【長編】答えはいつか、旅の果てで。

38.火を分け合って

「碧甲羅の拠点に行くならまあ、舟か泳ぐかだな……あー今夜は月が出てなくて見え難いからなあ。お頭も一人二人不審者見逃しても許してくれるだろうなあ」 紅玉海の海賊頭ラショウの言った通り、こちらが動く分には多少目を瞑ってくれるようだった。少々わざ...
【長編】答えはいつか、旅の果てで。

37.瑠璃の海を越えて

海が好きだ。 生まれたのが船の上だっただとか、名前にも『海』があるからだとか、なにかと縁があるというのもある。 だがそれらを差し引いても、どこまでも広く、冴え冴えと蒼く輝く水面も、うさぎの群れが飛び跳ねるような白波も、太陽の光を写し取った夜...
【長編】答えはいつか、旅の果てで。

36.陽炎

(負けた) 慌ただしく人が行き交い、物資や怪我人を運び、治療をして。そんな中で彼女はほんの僅かな間、呆然と立ち尽くしていた。(――私、負けた) 『それ』は、完全な、純粋な破壊の力だった。 ただ力をぶつけ合い、ねじ伏せる、それだけのものだった...
【長編】答えはいつか、旅の果てで。

35.故郷

故郷を取り戻す。 旅に出る前の自分だったら、その言葉をいまいち理解できなかっただろうとハルドメルは思う。 海を行く船の上で生まれ、旅をしながら育った彼女には、故郷と思える場所がなかった。友達と同じで、当たり前にそういうものを持っている人達に...